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2024/11/21 (Thu)
肉の万世
昼、万世で。
最近、肉系ランチがちょっと続いてる。
体が求めている、ってこともある。
最近、打ち合わせから打ち合わせの間をなるべく歩くようにしていて、体が栄養を求めてる…、って実感できる。
けれど、それとは違った理由が一つ。
魚をおいしく食べられる、気軽で手軽なお店が少ない。
それで気づけばお肉を食べてる。
…、そんな感覚。
居酒屋じゃなく。
ちょっと高くてもいいから炭で焼いた脂の乗った魚にご飯。
おいしいご飯に好みの味噌で作った具沢山の味噌汁があれば、飛んでいくのに。
銀座だったり神田にはある。
けれど新宿。
古くからサラリーマンが頑張っていた街と違って、でっち上げられたオフィス街にはそうしたお店ができなかった…、ということなのでありましょう。
文句をいってもしょうがない。
ここのオキニイリ、牛のカルビ焼きとハンバーグの盛り合わせ。
バラ肉、もも肉、ロースの端材なんかのいろんな部位を薄切りにして、甘辛醤油ダレで炒めたもの。
すき焼きの肉だけたべてるみたいな味わいが、ご飯のおかずにピタッとくる味。
それにふんわか、合い挽き肉のパテを使ったハンバーグ。
最近、オールビーフのハンバーグばかりがもてはやされるけど、食べてココロ穏やかにさせてくれるのは合い挽きのこれ。
フックラしてて、噛むとジュワッと肉汁たっぷり流れ出す。
しかもそこにデミソース。
コックリとしたこくがあり、缶詰マッシュルームの薄切りがご丁寧にもたくさん入った典型的なる昭和の洋食。
とてもうれしく、なつかしい。
スベスベご飯。
それに豚汁と、どれをとっても「お腹いっぱいになって帰ってくださいね」って言ってくれているようなもの。
パクパク、モグモグ、腹一杯。
ところで。
とてもなつかしいアップルさまのテレビコマーシャルのフィルムを一本。
まだパソコンのデザインがCRTの形に支配されていた時代の最後の最後の作品。
コロンとしたiMac。
ネットにつなぐのに3つのステップしか必要としないんですよ…、って内容。
ステップ1、電源をつなぐ。
ステップ2、通信ポートにケーブルをさす。
ステップ3は…、ないんです!って、俳優のジェフ(蠅男)ゴールドブラムがご不気味に笑うなつかしのコマーシャル。
パソコンがまだ高機能なアプリケーションを使って仕事をこなすための道具だって思われてたとき、いやいや、ネットにつないで生活をたのしむためのPCライフがあってもいいでしょ…、って。
そんな痛快な提案がこのときすでにあったんだなぁ…、って。
このとき夢見た未来が今ではすっかり当たり前になり、次に夢見る未来は一体、どんな物なんだろう…、って。
思ったりする、どうだろう。
[0回]
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2009/11/06 (Fri)
日記 : その他のレストラン
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Comment(2)
紅花別館、ココットカレー
遅めの昼を東京駅の近くでとる。
紅花別館。
日本橋のオフィスビルの谷間に埋もれるようにポツンと小さなお店。
Benihana of Tokyoと言えばアメリカでナンバー1の鉄板焼きのレストランチェーンであります。
その本家。
本家?
…、でいいのかなぁ?
どうなんだろう。
Benihanaじゃなく「紅花」で、しかもここにしか無いはずなのに「別館」という、もしかしたら本館はアメリカ、ニューヨークにでもあるのかも…、ってそんな不思議に襲われる。
実際はアメリカのBenihanaを作ったロッキー青木さんのお父さんのお店ですから、本家と言えば本家でもあり、まぁ、小さいことはワカチコしましょう。
夜は鉄板焼きでにぎわうというこの店の、昼はカレーが名物になる。
ココットカレー。
カレーは味噌とか梅干しとかが入っていそうな壺に入ってやってくる。
実はかつてこのお店では、夜は肉や野菜が踊る鉄板のその上に、ズラっと壺が並んでお客様を出迎えていた。
壺の中にはカレーが入ってて、それを鉄板の上に乗っけて温めている…、という具合。
鉄板焼きのお店の昼。
何を売るか…、って結構、どこでも問題になる。
お客様の昼の懐にあわせよう、と、安いステーキとかを売ってしまうとお店そのものの格を落としてしまう。
だから出来れば夜とは違った商品を!って、例えばアメリカのBenihanaは、一時期、ランチ限定でお好み焼きを売ったことがある。
おたふくソースと提携までして「炒め野菜がタップリ食べれる、ピザに乗っけた焼きサラダ」。
…、みたいなセールストークで一生懸命がんばったけど、結局、ソースが焦げる匂いがアメリカ人にはどうにもこうにもおいしい匂いに思われず、やむなく撤収。
紆余曲折の末、観光地以外の店では昼の営業やめた。
あるいは鉄板をつかわず寿司バーみたいな営業でしのいでたりする。
それがここでは調理器具じゃなく保温器として鉄板を使うという発想がおもしろかった。
それが今日。
やってきてみると1階の鉄板焼きのフロアはランチの鉄板焼きコース専用席になっていて、二階の洋食コーナーに案内される。
聞けば最近、鉄板ランチがとても人気でカレーどころじゃないんだという。
折角だからおいしいものを…、ってニーズも結構あるんでしょうね。
日本橋という街、おもしろい。
まずはサラダがやってきて、タップリの水。
氷が入った冷たいグラス。
2時ちょっと前と時間ながらも、20人ほどのお客様が食事をしててその3分の2ほどがカレーを食べている。
ハンカチ片手に汗を拭きふき、うれしそうにカレーを食べるおじさまたちの笑顔にニッコリ。
早くこい、こい、ボクのカレー。
壺にご飯、ラッキョに福神漬けがいそいそ、しずしずやってくる。
サービスも軽快にして確実で、昔来たときよりも数段、気持ちのよい店になっている。
いい感じ。
それにしてもここのカレー。
スッキリとした辛さが際立つ上等チキンカレー。
トロミ少なくサラサラしてて、洋食屋的じゃない本格的なスリランカ風。
よく煮込まれてホロホロ、スプーンの背中でほぐれる鶏胸肉がシットリ、奥歯に絡み付きつつとろけて消える。
ジャガイモ、ピーマン、タマネギ、キノコと具沢山ではあるけれどそのほとんどがカレースープにとけ込んでいて、旨味複雑、味わい濃厚。
ドッシリ、旨い。
ただおいしいだけじゃなく、お腹の中から滋養が体にみなぎってくる。
元気な気持ちが汗になり、頭のてっぺんから湧きだすようにダラダラ流れる。
おもしろいのが、熱々ご飯と一緒に食べると口の中に火がついたように辛く感じる。
なのにそのままスープのようにして飲むと、スッキリ、サッパリ、辛味よりもスパイシーな風味が口の奥から鼻にフワッと抜けてく。
香り華やか、不思議な味わい。
東京ベストカレーの5本の指に入るご馳走。
オキニイリ。
[1回]
2009/10/02 (Fri)
日記 : その他のレストラン
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Comment(4)
鉄板焼きの店にて秋刀魚
会社の近所。
旧白山通りの並木に面して、気になるお店が一軒あった。
「なかむら」っていう店。
テントの端に「きまぐれ鉄板焼き」っても書いてあって、メニューを見ると夜は鉄板焼きをつまみながら、お酒をたのしんだりできる居酒屋っぽい店のよう。
昼間は定食。
焼いた肉やら焼き魚やら、大衆食堂の定食メニューがズラっと揃う。
どんなお店なんだろう?って思ってきます。
お店の一番奥に鉄板カウンターとオープンキッチン。
鉄板を囲むようにして8人くらいは座れるのかなぁ…。
あとはテーブル。
座り心地の良い4人がけのテーブルが全部で3つという、ほどよい空間。
テーブルの上にランチのメニューが置かれてて、何を食べよう?ってちょっと思案。
鉄板焼きのお店なんだから、生姜焼きとかハンバーグとかがいいのかなぁ…、って思っていたらオレンジ色のエプロンをした元気で笑顔のきれいな奥さんが、お水をもってやってきます。
もし、迷ってらっしゃるんなら、今日のお薦めは秋刀魚ですからぜひ食べてみてください!って。
鉄板焼き屋さんでなんで秋刀魚?って、ちょっといぶかしく思っていたら「ワタまで太った本当に新鮮で元気な秋刀魚が入ってますから」って、追い打ちかける。
その快活と自信たっぷりのすすめっぷりに、それ、お願いします…、って乗っちゃった。
しばらく待って、やってきたコレ。
確かに惚れ惚れするほどに、太った秋刀魚。
魚の世界にメタボリックって病の心配は無縁なのでありましょう…、お腹がパンパン。
うらやましい。
皮目がパリンパリンに焼けていて、お箸を当てると、プシュっと透き通った脂が噴き出す。
ああ、おいしそう。
グリラーの直火の遠火で時間をかけて焼き上げたんでしょう。
中はシットリ。
外はカリカリ。
皮が自分の脂でコンガリ焼けていて、サクサクカリカリ。
小骨が口の中に入っても気にならず、ただただワシワシ、貪るように次々食べる。
ご飯を一口、口の中に放り込んだら、モグモグしながら次の一切れを骨からきれいにはぎとって、それでパクッとまた一口と…。
食べ始めると止まらぬ旨さに、テーブル囲むみんな無口になっちゃった。
一緒にためしにたのんだ焼きそば。
細いストレート麺の、ちょっと博多ラーメンみたいな麺線のハリのある麺。
甘めのソース。
しかもちょっとケチャップを足してるんでしょう…、酸味と香りがさわやかでご飯のおかずにこれがまたいい。
キャベツ。
豚肉。
スライスオニオン。
モヤシもタップリ。
まるで野菜炒めの中に麺が混じっているような、サービス精神旺盛がいい。
サイドに添えた紅ショウガが、なんで細かく刻まれてるのか?
それだけちょっと謎が残るも、決してこれも嫌いじゃない。
秋刀魚。
焼きそば。
ご飯に味噌汁。
またまた秋刀魚にご飯に焼きそば。
気づけばお皿の上には骨だけがペロン。
ワタもたしかにおいしかった。
プックラしてて、まるで全然こわれてなくて、口に入れるとトロンとなめらか。
苦みさわやか。
不思議と甘みと旨味も感じる。
とても濃厚でやわらかな、巨大なサザエの肝のような、そんな味わい。
堪能す。
昔は魚を食べるのが下手な子だった…、のでありますけれど。
何しろ魚に手をふれるのが怖くって、お箸を当ててこぼれとれる部分だけ食べ、後は残して平気だった。
けれど実は、骨にこびりついたところであったり、ヒレや尾っぽの周りだったり、食べにくいところの方が実はおいしい。
…、って思うようになったのが40も手前の頃のコト。
今ではこうしてキレイに食べることができるようになる。
大人になった!ってコトでしょう(笑)。
最初に元気に秋刀魚を勧めてくれた奥さん。
お口に合いました?って、ニッコリとする、そのニッコリにええ、この通りと骨だけになり果てた秋刀魚を指差しニッコリとなる。
なかなか、良い店。
今度は鉄板焼きを食べにきたくもあるお店。
[0回]
2009/09/07 (Mon)
日記 : その他のレストラン
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Comment(2)
ウェディングなお祭り
もうこの年になると、友人の結婚披露宴に呼ばれる機会は激減します。
知り合いのご子息令嬢の披露宴…、となれば話は別なのだけど、もう10年近くもご無沙汰でした。
めでたき本日。
晴れてボクの知人が結婚。
とはいえもう、一年近くも前に入籍すませて夫婦生活をはじめてはいて、その幸せをみんなと一緒に分かち合いたい!
それぞれの友人同士に近況報告もかねてたのしい時間を。
…、ってそれで内々のパーティーをするというコトになる。
折角だから、みんなでたのしく過ごしましょうよ…、と。
テーマを「日本のお祭り」とした。
場所はレスタジ、六本木。
いつもはスタイリッシュでお行儀の良いイタリアンレストランにて、「かの」叶ご姉妹さまも紳士(笑)をともないいらっしゃる。
…、こともあるという良くも悪くもヒルズなお店に、屋台を仕立て「夏祭りっぽい」趣向をこらす。
輪投げに射的。
わたあめ屋台に風船釣り。
ドレスコードも夏祭り。
浴衣にアロハに法被に雪駄と、およそ高級イタリアンレストランに似合わぬ姿の人たちが、続々集まりレストラン前のテラスに遊ぶ。
子供たちは大騒ぎ。
最初は遠巻きに眺めていた大人もじょじょに、お酒を片手に屋台に集まる。
空気銃をパパンと打ったり、風船釣りで大声上げたりと子供の頃に戻っていくのがおもしろい。
実はこのお祭り屋台にあわせて、フーテンの寅さん風の仮装で参加しようか。
と、思いはしたけど、実はとあるコーナーで司会をしなくちゃいけなくもあり、だから今日は我慢する(笑)。
祭りと言えば大漁船。
大漁と言えばマグロの解体ショーでしょう…、とそれで決まった解体ショー。
築地のマグロ屋さんにお願いし、マグロを一匹。
コロンと脂ののって太ったマグロをテラスの特設テーブルにドンと置き、三人掛かりで解体をする。
その前に…。
ケーキ入刀ならぬ「マグロ入刀」で盛り上がる。
今回のパーティーではウェディングケーキを用意せず、それで夫婦最初の共同作業でケーキを使うことが叶わず。
それでマグロ。
みなさん、これからマグロ入刀でございますので…、と言った途端にダダっと参加者近づいて、カメラを構える。
出刃包丁を手に持つ新婦。
それを支える新郎の腕。
エラのところにグサっと突き刺し、ググっと動かす。
フラッシュ、ビカビカ、シャッター、パシャパシャ。
すげぇ!って声が期せずしてでて、挙げ句の果てに「あんまり血が飛び散らなかったネ」って、みんなの期待は八墓村的スプラッターなイメージだった?
大笑い。
その後、専門家の手にてきれいに解体されたマグロが次々、料理になってやってくる。
例えばグリル。
ニンニク風味をしっかり移したオリーブオイルに、レーズンくわえて甘みを借りたさっぱりとしたソースがおいしい。
カルパッチョだとか、赤身のタルタル。
軽く表面を炭で焼き、炎の風味をつけたタタキにキノコにチーズ。
パルミジャーノをタップリ削った、チーズのコクと深い風味で味わうマグロもまたご馳走。
なかでも一番、旨いなぁ…、って思ったのが、イタリア刺身。
赤身に中落ち、中トロなどなど、いろんな部位をバルサミコ風味のオリーブオイルで味わう趣向。
ひんやりおいしい。
脂の甘みを堪能できる場所であったり、酸味混じりのさくっとおいしい赤身であったり、あれやこれやを食べ比べする、そんなたのしさ。
おもしろい。
パーティー料理も、こうしてメインの素材があると、華がくわわる。
とはいえココはイタリア料理のレストラン。
パスタ、ピッツァがかなりおいしい。
なかでもコレ。
トマト風味のカッペリーニをクルンと丸めて、茄子のグリルでくるんだ料理。
パーティー料理。
それもバフェの料理のパスタは取り分けるのがむつかしい。
みんながとっていくうちに、お皿がどんどん雑になって見苦しくなる。
けれどこれ。
一塊をサーバースプーンでキレイにストンと持ち上げられる。
いい工夫だなぁ…、って思ったりした。
シーフードのリングイニ。
ツナのソースのリガトーニ。
からすみ使ったオレキエッテなどなど、どれもキチンとアルデンテ。
おなかも満足、よいパーティー。
ちなみにボクが司会のコーナー。
新婚さん、いらっしゃい!なコーナーで、三枝役にてかなりテンション高めにはしゃぐ。
たのしく、熱く、パーティー終わる。
ほんわかとしたニューカップルの幸せを、おすそわけされお開きとした。
大安吉日、土曜日の夜。
めでたいついでに、動画を一つ。
「ジルとケヴィンのウェディング」
っていう、かなり有名な動画なのだけど、こんなめでたい日にこそこうして紹介するのにふさわしい。
と、そう思ってのっけます。
ほんとはね、コレをみんなとしたかったのだけど、人も時間も足りずにできず、ちょっと残念。
ぜひ、いつか。
[0回]
2009/09/05 (Sat)
日記 : その他のレストラン
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Comment(13)
大久保のふじ
大食いに溺れる夜。
大久保の居酒屋「ふじ」。
半ばもう東京の中のソウルになってしまった感のある大久保の街。
JRの駅を降りてすぐ目の前のビルの地下。
お店の看板にも書いてあるとおり「居酒屋」というコトになってはいるけど、一番の売り物がビーフシチューという不思議なお店。
看板の下にも、お店の入り口に続く階段の横にも「東京一のビーフシチュー」と誇らしげに書いてあって、こりゃなんじゃ?って不思議に思う。
階段トントン。
下に降りると入り口の横に「当店は居酒屋です!」とまた謎掛けのような貼り紙でてて、またまた不思議な覚悟を突きつけられる。
予約してたサカキです…、って、中に入るとこれが拍子抜けするほど普通の居酒屋だった。
小さな厨房。
その前に3人分のカウンター。
クツを脱いで上がる座敷に4人がけのテーブル4つ。
一番奥のテーブルもらい、デブが4人で小さくなってちょこんと座る。
お酒をたのむとお通しがくる。
一つはなんと生ハムメロン。
もう一つはところてん。
「うちは居酒屋だけど普通の居酒屋とは違いまっせ」って、力強いメッセージ?
生ハムメロンのメロンの部分はマスクメロンじゃなくって「羽十」。
昔、秋葉原に青果市場がまだあった頃、出勤前の時間にいくと「おにいちゃん、羽十安いよ、持ってかない?」って、一箱100円とかで譲ってもらうのがたのしかった。
ハネーデューメロンのコトを「ハネジュー」って略し、それを感じにすると羽十。
ウリっぽい、甘さ少なく青臭い、フルーツというより野菜に近い羽十の味。
それが生ハムの塩味と一緒になると不思議とおいしい。
ハムの脂の香りもひきたて、お酒がすすむ、良き前菜。
さて一品目のビーフシチュー。
いきなりこの店一番の名物料理がやってきて、気持ちが上がる。
ここのご主人。
昔、札幌のホテルで洋食のシェフをしていたことがあったらしく、そのときの技術と経験をいかしてこうした料理を作る。
大きなお鉢にタップリ一杯。
スプーンの背でそっと触れると、ホロっとほぐれる。
よく煮込まれた見事なシチューで、ソースもしっかりコクがある。
けれど例えばラードや肉の脂の変な癖や香りがなくってゴクゴク、スプーンですくって飲める程、サッパリしているすんごいソース。
こりゃ旨い。
東京で一番おいしいかどうかはまるで別として、肉の量だけで多分300グラムは優にある、このボリュームでたった800円という値段のことを考えるなら、確かに東京で一番コストパフォーマンスの高いシチューではありましょう。
なぜだかナンが一枚ついて、それでソースをすくって食べる。
ナンのバターとソースのコクが見事にあって、またおいしい。
サラダ代わりにアボカドマグロ。
アボカドとマグロを同じサイコロ大に切り刻み、ドレッシングを合わせた前菜。
普通、アボカドと刺身を一緒にするときは、マヨネーズで創作料理風に仕上げるか、胡麻と油でハワイのポキのようにする。
ところがココでは、スパイシーで酸味がゆるめのフレンチドレッシングみたいなソースであえて仕上げる。
ちょっと足りないくらいの味が、むしろマグロやアボカドの風味をいかしてなかなか旨い。
なによりビックリするのが量で、なんとアボカド1個を使う。
そんな証に、お皿の横には空っぽになったアボカドの皮がのっかってくる。
半分使って、半分無駄にするくらいなら、一回一回、一個全部使い切った方がいいんじゃないか?って、そんな思い切りのある気っ風よさ。
そして、もう一つのここの名物、クラポーデンボライユチキンがきます。
クライポーデンって言うのはフランスの古典的な料理のひとつ。
粗いパン粉をチキンにしっかりまとわせて、粉チーズや香味野菜をタップリのっけてオーブンで焼く。
パン粉がサクサク。
息を吹きかけるとパン粉がフワッと宙に舞ってとんできそうな、そんな儚いパン粉の付き方。
それがこの料理の一番むつかしところなのだけど、よく出来ている。
鶏はシットリ。
パン粉でやさしく守られていたからなのでしょう…、ジュースが中に閉じ込められててサクっとしてて、なのにふんわり柔らかで、一口食べると癖になる。
ソースはウスターソースの香りがツーンと鼻に印象的な、ワインベースの軽いもの。
思わずご飯が食べたくなっちゃう。
力強くてたのしいご馳走。
料理はどれも的確です。
たとえばオムレツ。
外はしっかり、火が入ってて焦げ目さえある。
けれど中はトロトロ半熟をちょっと過ぎた程度にカチっと熱が通ってる。
とはいえ硬い完熟じゃなく、半熟だったときの記憶がしっかり残る、ふんわかやわらか。
やさしい食感。
しかもほのかに塩の味。
玉子の風味と味をこわさぬ程度に味が入ってて、それそのもので十分おいしい。
フランス料理の基本はオムレツ。
そういわれるけど、たしかにここのこのオムレツを食べるとこの人、しっかりとしたフランス料理の世界を生きた人なんだなぁ…、って感心をする。
とはいえココは居酒屋で、だから居酒屋料理もしっかり。
例えばサバの昆布じめ。
脂ののった分厚い大きなサバの半身を、丸ごとつかって昆布でしめる。
下の切り身が見えぬ程、分厚く立派で頑丈な昆布がトロトロ、トロミと旨味をサバに移した見事なしめ鯖。
ペロンと昆布を剥ぐと、中にはキラキラ。
青い魚独特の、キラキラとした銀色の肌。
醤油いらずでそのまま食べて、なのにおいしい。
立派な居酒屋料理になってる。
他にもサバの焼いたのや、ほっけやシシャモ。
ヌタにおひたし。
野菜炒めや鶏やまぐろの唐揚げなどなど。
酒の肴においしいものは、なんでもござれの博愛主義にご機嫌になる。
そうそう、そういえば、ただのスライスオニオンをここ特製のフレンチドレッシングで食べるとフランス料理の味がして、なのにおかかに醤油で食べると居酒屋料理の味になる。
料理の世界ではちょっとした違いが大きな違いになるんだ…、ってそんなことを実感しちゃう。
おもしろい。
そして〆の焼きそばがコレ。
洗面器程の大きさのある深いお鉢にタップリ、ドッサリ。
多分、袋麺の3人前を一度にこうして作ってるんでしょう。
これまた食材を残してしまうくらいなら、全部使ってその分、安くいたしましょう…、ってココ独特のサービス精神。
それから哲学。
独特な料理感が作った大胆不敵な商品。
キャベツ、ニンジン、タマネギ、ピーマン。
椎茸、しめじにえのき茸と、驚く程の具沢山。
野菜とキノコの炒め物の間にチョコっとそばが混じって炒められてる…、ってそんな感じで腹一杯。
ところでここ。
今年のはじめまで、〆のスパゲティーやらハンバーグなんかをやってたらしい。
けれどとある、テレビ番組でその商品を紹介されて、それでしばらく、来る人、来る人がハンバーグをおかずにスパゲティーを食べにくるようになっちゃったという。
居酒屋なのに。
お酒も飲まずに大盛りスパゲティーをたらふくたべて、それでさよならって人たちが増え、常連さんたちに迷惑をかけ、それで今ではその二つの商品を封印しちゃった。
だからお店のそこここに、「うちは居酒屋」って貼り紙がある。
お店お店にその店独特の楽しみ方があるはずで、それを守るということも良い店として大切なコト。
ちょっとバランス崩してしまったこのお店。
畳に座ってくつろぎながら、酒と料理をたのしめる「大久保的なるビストロ」として頑張っていけば、多分、昔のご機嫌を取り戻すことができるんでしょう。
そんなことを、思ったりした。
ちょっとビターな大久保の夜。
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2009/08/14 (Fri)
日記 : その他のレストラン
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