銀座でお昼…、煉瓦亭。
モボ・モガ時代の銀座をいまだに彷彿とさせる、クラシックなる佇まい。
メニューもずっと変わらず昔のままを守ってて、若い頃には来るとかなり緊張したもの。
いまではむしろホっとする。
ボクの隣のテーブルに開高健似のおじぃちゃまと、白髪キレイな奥様が二人で料理を待っていた。
おじさま言います。
もう、こういう店はオレらの世代で無くなっちゃうかもしれんなぁ…、と。
そしたら奥様。
あら、何をおっしゃるの。
こんなに若い方がいらっしゃってるじゃございませんの。
と、そしてボクと目が合った。
いやいや、ボクも決して若いとは言えませんからって恐縮したら、何をおっしゃるの。
今が働き盛りでらっしゃいましょう…、と。
おじさま、ビールをコクリと飲んで、ボクに向かってグラスを上げる…、大人同士のご挨拶。
いつまでも若い気でいるボクではあるけど、30代の人よりも70歳の人の方がずっと年齢的に近くになった。
とは言え過去20年よりこれからやってくる20年の方がずっと重くて、濃縮された年月なんでしょう…、やっぱりボクは若造だって思ったりする。
さてランチ…、まずはシュリンプサラダを選んでたのむ。
楕円状のガラスの鉢にタップリレタス、ポテトサラダにトマトがギッシリ。
レタスは虫歯にしみるほど冷たく、バリバリ歯ざわり鮮烈…、じゃがいもをザックリ粗切りにして作ってるポテトサラダはほんのりあったか。
できたて感がオゴチソウ。
ドレッシングも油と塩とレモンで作った典型的なるフレンチドレッシング…、野菜の風味や味わいを邪魔することなくサラダ野菜の味をシッカリ支えてくれる。
そして何より、エビがスゴイのでありまして、ボウルをグルンと回してみると…。
茹でたばかりの見事なエビ。
全部で6個、カクテルソースをまとってやってくるのであります。
冷たい。
けれど芯まで決して冷たくなくて、つまり茹でたばかりのモノをその場で冷やして盛られたモノ。
メニューにシュリンプカクテルがあり、そのカクテルのエビとまったく同じモノ。
ムチュンと歯ごたえ肉感的で、甘くてエビの香りも上等。
開高健氏の反対側のテーブルに、川端康成に似たおじぃさまがいて、白いワインを片手にシュリンプサラダでユックリ、食事をたのしんでいた。
あたかも文豪レストラン的感じがしてきて気持ちがあがる。
メインのカツレツ。
上カツレツをもらいます。
程よく厚みをもったヒレ肉。
細かなパン粉をギッシリまとってラード混じりの甘い油でカリッと揚がってやってくる。
パン粉のサクサク、しっとりとした肉の食感。
塩と胡椒で十分下味つけられていて、だからそのまま食べても旨い。
甘くて、ちょっとミルキーな豚ヒレ肉にウットリします。
ねった芥子とウスターソース…、自家製の甘みと酸味が際立ったフルーティーなソースをかけて味わうと、油がスッキリ、やさしいゴチソウ、オキニイリ。
この関東ではとんかつに中濃ソースというのが一般的で、けれど洋食レストランでカツレツ食べるとウスターソース…、洋食世界は日本全国共通レシピというコトでしょう。
サラダで野菜をタップリ食べた…、けれどカツレツのサイドに千切りキャベツが山盛りでご飯をとらずに千切りキャベツをお米がわりにシャキシャキ食べる。
ウスターソースにパン粉油のコクがキャベツをおいしくさせる。
揚げ物なのにお腹の中にススッと収まり、午後の元気が湧いてくる。
ところでこの店、テーブルの上に置かれた芥子を一組ごとに新しいのに交換する…、だからいつも容器の中の芥子はキレイに山形をなし、ツンと香りや辛味も新鮮。
外で食事をすることが、粋で贅沢だった時代のこうした風習、開高健氏の代でなくしてしまうのはあまりに惜しく、だからいつかまた来ましょうと思って帰る…、春の今日。
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