つくばに移動で試食に仕事。アルゾーニイタリアというレストランの夜のメニューを改革中。
日本のイタリア料理のお店はみんな、パスタをおいしくしようと一生懸命。たしかにおそらく世界で一番、日本のパスタのレベルは高い。
けれどそのせいで、昼はいっぱい。夜はしんみりというお店が多いのも現実で、それは蕎麦屋やうどん屋を夜の食事の場所に選ばないというのと同じ。
それで今回、パスタにたよらぬイタリア料理の楽しみ方を提案しましょうと、あれやこれやを試してる。
前菜の盛り合わせに野菜のスープ。
どれもきたるべきメインに備えてお腹をたのしく整えるための軽やかな味。
ガスパチョ仕立ての冷たいスープに、トマトのジュとコンソメ混ぜて凍らせたグラニテ乗せて、涼しさ演出。
発酵させたピザ生地にハーブを練り込み焼いたのを、パンの代わりにという趣向。
ムチムチとした歯ごたえと、薪の香りが食欲誘う。
メインディッシュは肉をメインにと多彩に揃える。特に豚のロースト、赤身の牛肉の炭焼きは定番料理にしようとちょっと力を入れる。
だってどんなに手の込んだ料理よりも、おいしい素材をシンプルに味わうコトが今の贅沢。
例えば海老もスティームしました。
その海老と一緒に野菜もスティームし、オリーブオイルとおいしい塩で味わう提案。
海老より野菜にビックリしました。
つくばで取れるという黒ニンジン。濃い紫色で、焦げたニンジンのように見えるんだけど食べるとニンジン。
青臭さがほとんどなくてとても甘くてひっくり返る(笑)。小さなカボチャやブロッコリ。路地のトマトと、多彩な食感、味わいにウットリしながら食べ進む。
ちなみにサイドの料理をたくさん揃えた。
それも野菜の料理がメインで例えばじゃがいも。塩と一緒にオーブンで焼いただけなのに、ホクホク甘い。
地の空芯菜のペペロンチーノ仕立てであったり、フレッシュバジルのソースであえたニョッキであったり、それらを自分のお皿に移して、自分だけの料理のようにして食べる。
おいしいコトよりたのしいコトが、大切なのさ!と思えばこういう提案になる。
ところで昨日、家で仕事をしながらhuluみていた。「ながら」のつもりでなのにすっかり見入ってしまった映画に出会う。
「乾いた花」という作品で、1964年の公開。
石原慎太郎の原作で、篠田正浩監督作品。1964年といえば東京オリンピックの年でもあって、日本中が憂かれ騒ぎの年のコト。にもかかわらずこの作品の、暗くて重たく、人のココロの闇をえぐってさらけ出すような激しさに、目は釘付けで仕事どころじゃなくなった。
今となっては話題にできぬ階級観や麻薬に賭博。自分で自分を傷つけつつも、どこまで自分でいられることができるのか、そう、問いかけながら見るとなんだか生きていくのが怖くなるようなスゴさを秘めた見事な作品。
こういう反体制の極みのような作品を若いときに書いた人が、後に体制の権化のような人になって老いていく。
そんな皮肉を思いながら観るとこれまた感慨深い。
それにしても主演の池部良の日本ばなれした表情、それに立ち居振る舞い。コレは一体、どこの国の物語…、って思ってしまうほど。加賀まりこのコケティッシュでうつくしいコト。廃退とは美のアクセントって思い知る。
昔の日本の人たちは、これほど魅力的だったのかと今の自分を恥じる夜。