夜、熊谷からとんぼ返りで新宿につく。
かつて熊谷、高崎方面から東京に帰るということは=上野につくというコトだった…、けれど今では湘南ラインが新宿、渋谷に向かって走る。
なんだか身近な街になったような気がして、事実、早い時間に到着します。
それでついでに夕食を、と早めの夕食。
新宿駅の西側の地下…、メトロ街っていう地下街にある「墨絵」にきました…、夕食時になると行列ができてなかなかすぐには入れぬ繁盛店で、今日はすんなり。
お店に入るとディナータイムの本格的な稼働に向けて、厨房の中で仕込みの音に匂いがしてくる。
大テーブルを飾るお花も活き活き、準備万端という風情。
前菜、スープやリゾット、メインディッシュそれぞれに数種類の選択肢があり、それらを自由に組み合わせ、自分ならではのコース料理にして食べる。
今でこそプリフィックスってこのやり方を大昔からやっていたココ。
懐具合やお腹の具合にあわせて自分の食べたいように食べることができるって、なんてステキなコトでしょう。
だから女性に圧倒的な支持を受けてる。
今日はほどよくお腹も空いて、それでたっぷり…、三皿ディナー。
まずは前菜、カツオのローストを選んでたのしむ。
分厚いカツオの切り身をロースト。
ベリーレアの状態にして、そこにオリーブオイルとジェノべぜソース。
ハーブの葉っぱを散らしてそれをほうれん草のパスタと合わせる。
パスタはくるみのソースであえて、これ自体がソースのような役目を果たす。
かつお独特の力強い香りをバジルがねじこむように爽やかにして、カツオのタタキとはちょっと違った南欧風のゴチソウになる…、お腹が空腹思い出す。
それからリゾット。
スープかリゾットが選べるというのがココの独特。
同じお皿の数でもこれなら量の加減が手軽にできる。
選んだリゾットは、青海苔としらすを使ったちょっと和風なフレーバー。
ご飯ではなく蕎麦の実使って仕上げているのがオモシロイ。
ホツホツとして、しかもスベっとなめらかで小さな豆が何種類か一緒に入って炊きあがっている。
食感鮮やか。
コロコロ舌の上を転がり、そのうちトロンと粘り気が出る。
口の中の状態が刻々と変わっていくのがたのしく、味は塩味。
そこにしらすと青海苔の海の風味が混じっておいしい。
やさしくお腹をみたしてくれる。
懐石料理なんかでも、料理の合間に炭水化物の料理がはいる…、「おしのぎ」といいお腹を軽く満たすことで、料理の味に気持ちを向けてしかも会話をたのしくさせる。
おいしい工夫、オモシロイ。
それにしてもココのお料理。
フランス料理のようであり、けれどイタリア料理のようにも見えて独特。
コンチネンタルとでもイイますか。
イギリス以外のヨーロッパ大陸の料理をアレンジして提供する…、料理世界においてイギリスはとても特別。
ドーバー海峡のおいしいヒラメも、フランス側にあがれば見目麗しいムニエルになり、イギリス側にあがってしまうとフィッシュ&チップスに成り下がっちゃう…、ってそんな感じの区別があったりするのがオモシロイけど、ココの料理はコンチネンタル。
鯛もこんなオシャレな姿でやってきました。
鯛の切り身を芯にして、それをホタテのすり身でくるむ。
コロンとまんじゅうみたいのが3つ。
それぞれにセルフィーユをのせ、アメリケーヌソースをタランと垂らす。
きのこをオリーブオイルでソテして一皿。
ナイフを当てるとスパッと切れます。
ホタテのすり身がプルンと弾けるように割けて中から鯛の身ネットリ、顔をだす。
ムッチリとしたホタテのすり身。
ネッチリ奥歯に貼り付くように崩れる鯛。
蒸して仕上げて、鯛の切り身のうま味がみんなホタテのすり身に閉じ込められる。
それがそのまま口の中へとやってくる。
とても贅沢。
エビの風味とうま味が詰まったアメリケーヌソースもゴチソウ。
一滴残らずパンですくって食べたくなるようなオゴチソウ。
今日の肉のメインは羊、あるいは牛肉ローストとかなり充実してるんだけど、お店の人に聞いたらほとんどの人が魚を選ぶんだという。
魚をおいしく食べられる洋食屋さんは結構すくなく、だからこうしたお店は貴重とコトなんでしょう。
ご飯のオカズでないお魚で、酒の肴でもないお魚をひさしぶりに堪能します。
それにしてもココはパンが本当においしい。
お店に実はパンのお店が併設されてて、そこで売られるオーガニックで素朴な味わいのパンがいくつも食べ放題…、種類も全部で5種類ほどありそれを調子に乗って食べてるとお腹がパンパンに張ってしまって料理を全部味わえなくなる。
だから自制をするのだけれど、バターがこれまたおいしくて、しかも陶器の器にたっぷり入ってやってくるからどうにもしょうがない。
バクリと食べて、その塩味と小麦の風味に身悶えながら、ローズマリーの風味のアイスを食後にもらって腹いっぱい…、さてさて家へと戻ります。
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