割烹中嶋で昼をとる。
星がついた和食店。
ご主人の中嶋さんは魯山人直伝という日本料理の世界では有名な人。
当然、夜は料亭価格を必要とする敷居が高くて気軽にいける店じゃはない。
けれど昼。
おどろくほどに気軽な値段でランチを食べることができる。
当然、贅沢な食材を使って料理は作れない。
夜のスタッフがフルスタッフでおもてなしというわけにもいかない。
素材はイワシ。
若手スタッフですべてを取り仕切るというちょっと変わった営業形態。
でもって、これがなかなか気持ちいい。
厨房のいつもは奥の方で仕事をしている人たちが、板場にたって直接お客様の顔を見ながら仕事をする。
不慣れなコトがときどきおこる。
それに対してお客様のリスポンスがあり、それに正しく対応するのも料理人として大切な修行のひとつ。
だから彼らも一生懸命。
その一生懸命をみるのがたのしく、それでたまにきたくなる。
磨き上げられた白木のカウンター。
中には板場で、奥には大きな厨房があり中でキビキビ、10人ほどかなぁ…、夜の仕込みもあるのでしょうけど働いているのが見える贅沢にしておいしい空間。
いつ来てもメニューは同じ。
変わった料理をつくることより、基本的な料理をシッカリ、いつも同じように作り続けることこそが調理人として大切な心構えでありますからして、いつもおんなじ。
とは言え、刺身、煮物に油物…、ココではフライ。
フライを玉子でとじた柳川。
おおぶりのイワシが入ったときだけ作る、塩焼きとそれでメニューは全部というとてもシンプル。
けれど日本料理の基本はみな含まれている。
ただ慢性的に塩焼き用のイワシが手に入らないからなのでしょう、塩焼きの欄にはシールが貼られてる。
どれも魅力的な商品で、悩んで柳川鍋、たのんで食べる。
フックラとした身厚のイワシ。
キレイにさばいてパン粉をつけてカラッと揚げる。
細かなパン粉で、フライはコレにウスターソースをかけて食べる…、それもゴチソウ。
それを勿体無くも玉子でとじる。
上等な出汁。
柳川鍋にタップリはってクツクツ炊いて、そこにフライ。
パン粉が出汁を吸い込んだ、その頃合いで溶いた玉子をタップリかけて、グツグツさせて持ってくる。
よぉーく溶いた玉子だから、黄身も白身も渾然一体。
だから見事に熱が入って、フンワリふっくら、目に鮮やかなオゴチソウ。
まずは玉子をスプーンですくう。
みため以上にフックラでなにより出汁がジュワッと舌にひろがっていく。
かなり熱々。
だからフウフウしながら味わう。
割烹料理のお店でフウフウ…、熱々以上の熱さの料理を味わえる。
なんだかちょっとオモシロイ。
そしてイワシのフライをパクリ。
出汁で煮こまれ濡れてるはずの、パン粉衣がサクサク、前歯で崩れる不思議。
煮こまれ尚も揚げたて感が残っているのがステキなところ。
そしてフワッとイワシの香りが鼻に抜けていく。
ステキであります…、イワシという大衆的な魚がキチンとゴチソウ料理になっているのが見事でスゴイ。
ご飯の上にフライと玉子を乗っけてそこに出汁をタップリかけまわし、ザブっと食べると上等丼のようになる。
シャキシャキとした玉ねぎの食感たのしく、やっぱり旨いと思いはするけど、でも昔と果たして同じなんだろうか?
そんなコトをちょっと思ってしまった今日。
ご飯がベタッと茶碗にはりつき、フライもちょっと油臭さを感じてしまう…、昔のご飯は食べ進めると自然に茶碗がキレイになっていったし、油はいつも新鮮で出汁の風味を邪魔することはなかったのにネ、今日が例外だったのか、どうなんだろう、ちと心配。
とはいえ、出汁のシッカリした味噌汁に手作りの漬物の味はシッカリしてる。
ご飯が一杯だけならお替りできて、1000円札を出してお釣りがもらえる900円…、雰囲気、味わい、なによりこれだけたくさんの調理人を目指す真摯な若者たちの姿をみられてたのしめる、料理の対価としては、申し訳ないほどの値段で恐縮します。
次くるときは、塩焼きあればいいのになぁ…、とそんなコトも思って帰る。
キリッと気持ちを切り替えて、仕事をしましょう、ニッコリと。
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