家の近所の「南昌飯店」という中華料理のお店で夜。
元気な中国人のおかぁさんがいるお店。
四谷三丁目というこの町は、ずっと案外、のどかにやってた。
地下鉄出口の交差点には大きな看板をかかげるチェーンストアがありはするけど、そこからちょっと離れると、ここにしかないお店がひっそり。
おなじみさんで支えられてるお店がたくさんあって、だから震災のあと、街から明かりが消えたりときでも、そうしたお店はにぎわっていた。
看板の明かりなんかつけなくっても。
お店の中の照明が、薄暗くなってしまっていたってそこにいつものお店の人が、ニッコリしてれば何千ルクスのあかりと同じ役目をしてた。
お客様をみんなで分け合う鷹揚さだってあったのだけど。
最近、みんな苦労をしてるんでしょう。
お客様を集めるための工夫を必死にやっている。
ここのお店のおかぁさんは、お店の中が暇になると外に出てきて街行く人に、「また、来てネ」って笑顔ふりまき声かける。
ここの隣のチェーンの居酒屋。
幟の旗をたくさん立てているのだけれど、その一本。
南昌飯店の看板に一番近いところにあった旗を斜めに付き出して、遠くからでも見えるようにしてるのですネ。
工夫といえば工夫だけれど、なんだか姑息にみえてあんまり好きじゃない。
お店に入って、こんばんわ!
そしたらおかぁさんがやってきて、「今日は本当にありがとう」ってニコニコしながら手をにぎってくる。
次から次へとやってくる、お客様ひとりひとりに「ありがとう」って。
他に沢山、お店はあるのにうちを選んでくれて本当に感謝します…、って、言うからこちらも来てよかったって思ってしまう。
夜にも定食があるのですね。
メインの料理違いで三種類ほど揃ってる。
ひとりのお客様がビールをたのんで、〆にとそれをよくたのんでる。
今日はお米のご飯をモリモリ食べたく、それでまずは定食をとる。
ムースーロー。
キクラゲと豚肉の卵とじがメインになった夜の定食。
ご飯にスープ、それからサラダでひと揃え。
中国料理の玉子炒めは本当においしい。
フルフル、フックラ。
タップリ油を含んで仕上がり、しかも出汁のうま味がタップリ。
ココのは最後にとろみをかける、だからとてもみずみずしくてれんげですくって食べるとあんかけスープのような食感さえする。
クニュクニュとしたキクラゲが、そのなめらかを引き立てる。
それから酢豚。
ココの酢豚はかたくなに、赤い酢豚。
黒酢の酢豚がはやりの中で、酸味がおいしくご飯のおかずにするにはこっちの方がおいしい…、と。
それでずっとこのレシピ。
出来たばかりの熱々の、一口目分はかならずコホッと咳き込んでしまう。
お酢が立っててツンとくる。
しかもここのお酢。
多分、米の麹を発酵させて作ったモノじゃないのかなぁ…。
だからコッテリ、コクがある。
オレンジ色がちょっと濁った色になってる。
だからお酢のうま味もひときわ。
コリっと揚がった豚肉の、顎にしみいるような食感。
噛むとクシュッと脂が潰れて、肉のうま味がにじみだしてくる。
肉以外には玉ねぎ、ピーマン。
それも少々。
だからほとんど豚肉で、まさに酢豚。
お店によっては「酢野菜」みたいな酢豚が出てくるところがあるけど、ココはとっても良心的。
ご飯のおかずにこれはピッタリ。
甘酢のタレがあまりにおいしく、それを何かにつけて食べたくなっちゃうほどのオゴチソウ。
隣でシニアな飲み会を、6人くらいでやっていた。
中のひとりが多分、常連。
そのおじぃちゃんが一生懸命、この前食べておいしかった料理を注文しようとするも名前が思い出せない。
お店の人に説明するも、なかなかそれが伝わらない。
おじぃちゃんも一生懸命。
お店の人も一生懸命。
伝える努力と、わかろうとする努力がぶつかりワイワイガヤガヤ。
結局それは四川風のおこげだったと判明し、みんなニコニコ、大笑い。
知らずに拍手がわいてきて、和気あいあいな食卓になる。
言葉が拙い人たちだから、コミュニケーションに必死になれる。
ボクらは日本語が不自由ないってコトに甘えて、すべき努力を怠るコトがあるのかも…、って思ったりした。
一緒に食卓かこむ友人がたのんだ酒のつまみ的なモノ。
カキの風味付きフライっていうのがあって、それをたのんだら「牡蠣フライひとつ」って厨房の方に注文してた。
たしかに牡蠣のフライであります。
けれどパン粉をつけずカタクリだけであげる揚げ物。
フライと聞いてほぼ自動的にパン粉フライを思い浮かべる…、それが日本の食文化。
フライパンで焼けばみんなフライと呼ばれる…、目玉焼きなんてフライドエッグでありますからして、パン粉フライは少数派中の少数派なんじゃないかって思ったりする。
牛肉を薄切りにしてスパイス混じりの油で煮込んだ四川風の料理をパクリ。
山椒のしびれが口や舌をビリビリ刺して、ガツンと強烈、一口ごとに食欲がわき胃袋ほんのり汗をかく…、体もポカポカあったまる。
また来てネ…、っておかぁさんに見送られつつお店をあとに、また来ましょうネ、ニッコリと。
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