昼を銀座で蕎麦にします。
大木戸矢部というお店。
矢部さんという人が、新宿御苑の大木戸門の地下でお店をやっていた。
だから「大木戸矢部」という名前。
今、そのお店は「妹尾」さんていう大木戸矢部で修行した人がやってるお店に変わってて、大木戸門から徒歩5分ほどの花園町に暖簾は移した。
あまり便利な場所ではなくて、けれどワザワザ、足しげく、通うおなじみさんに支えられ知る人ぞ知る繁盛店になったのですね。
そしてチャンスがやってくる。
銀座でお店を開きませんか?と。
2年ほども前でしょうか…、この場所、この店に本店移した。
銀座と言っても8丁目…、最寄り駅は新橋駅で、だから銀座の気取りは少ない。
立派なビルの地下1階。
探してくるような場所ではなくなり、その分、逆に苦労をしているみたいに見える。
不便な場所で一生懸命やってると、オレがいかなきゃカワイソウ…、と贔屓な人がやってくる。
けれど便利な場所で一生懸命やってても、オレがいかなくてもなんとかなるだろうって足が遠のくようなコトがあるのです。
飲食店の場所選びって、なんだかとてもむつかしい。
まずは、牡蠣そば。
季節のそばを選んでたのむ。
ポッテリとした大ぶりの牡蠣。
腹はでっぷり膨れてて、けれど襞はギュッとしまってつやつやしてる。
絵で言うならば印象派。
ルノワールが描く豊満な女性のようなそんな牡蠣。
それが2つ。
そして海苔。
あとは結んだ三つ葉だけという、とてもシンプルで潔い。
冷たい蕎麦は、コシと歯ごたえが命であってだからやってきたらば急いで食べる。
特にここの蕎麦のみずみずしさは天下一品。
おいしい水を麺の中へと閉じ込めて、それをスルスルたぐるがごとき。
さわやか、軽やか、しかも香りが際立って麺だけ食べても甘くて旨い。
しめて再び湯にくぐらせて、温かくして出汁をかけてもなおみずみずしく、蕎麦の香りがそこなわれない。
しかもトロンとなめらかに、蕎麦独特のネットリとした食感発揮して旨い。
冷たいそばは口のゴチソウ。
温かいそばは喉のゴチソウってボクは勝手におもっているけど、ココの蕎麦のムッチリと喉のすみずみ撫で回すさま…、身悶えるほどのオゴチソウ。
それにしてもココの出汁。
カツオの風味が華やかで昆布や雑節が深みや彩り添えている。
スキッとしていて、しかも後味ドッシリしてる。
ゴクゴク飲める。
飲めるのだけど味わい深くて、口の中を転がしながら味わいたくなる濃厚さ。
牡蠣にピントをあわせて接写。
フックラしてて、牡蠣の周りが少々白濁してみえる。
海のミルクのなせる技。
出汁にくぐって周りだけにほんのちょっとだけ熱が入って仕上がる。
中はレアーでみずみずしくて…。
噛むとクチュっと潰れて中からうま味がトロンとやってくる。
上に飾った海苔が徐々に、出汁をすいほぐれて香りとうま味をにじます。
そのうちホロホロ崩れてちって、麺にからんで口に一気にながれこむ…、小柱に海苔のあられ蕎麦をひさしぶりに作ってみたくなりました!
それから追加で納豆うどんをとり、分ける。
一人おそばが一杯だけでは少々、お腹がこころもとない。
それでふたりで一杯とって、半分ずつを分けてお鉢に盛ってもらった。
1.5人前という絶妙のボリューム感をめざしてたのむ。
ココの納豆うどんはボクにとって思い出の料理であります。
ずっと納豆は食べられなかった。
嫌いというより、そもそも食品として認めてなかった…、つまりこの世に存在せぬに等しい食材。
それが食べられるようになったキッカケ。
ここの納豆うどんでござった。
コース料理を食べた後、そばを〆にするのがココのスタイルで、けれどサカキさん、沢山食べられそうだから、うどんも作ってみましょうか?と。
うどん屋さんがかけぬ手間をかけて作った自家製うどんで、キリっとしめるとうまいんですヨ…、と誘いにのってお願いしたら、それが納豆まみれのうどんだったワケです。
納豆がただのってるだけじゃないのです。
納豆に海苔、削り鰹に玉子の黄身をのっけてよーくネリネリしてからズルンとたぐる。
まるでカルボナーラのような姿で、泡をたたえた納豆が麺にシッカリからんでネットリ、おどろくほどにクリーミー。
口のすみずみなめらかにする。
納豆臭さはあまりなく、タンパク質の強いうま味が口にひろがるなつかしの味。
ポッテリとしたそば湯をコクリと、口とお腹をスッキリさせて、また参りますとあとにする。
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