夜を神田で魚を食べる。
「丸ト水産」というお店。
かつて一緒に仕事をさせて頂いたこともあり何度も通っていたのだけれど、ちょっとご無沙汰。
一年近くぶりという感じでしょうか。
神田の駅の周りに2軒。
全席テーブル席という、二号店目の西口店を覗いてみようと思ったのだけど、土曜はそちらは定休日。
神田という街。
サラリーマンの街だから土曜はちょっと静かなんです。
だから従業員のコトを考え、思い切って休みにしたんです…、って。
だって居酒屋。
大衆的で元気が売り物のお店の従業員が、休みも取れずにいつも疲れ果ててて空元気…、っていうのじゃ哀しく、つまらない。
いいんじゃないの…、って思ったりする。
それで古い方。
南口の改札口の近くにある店。
古い一軒家を丸ごと使った、風情ある店。
一階部分のテーブル席をもらえませんか…、とお願いしたら運良くもらえた。
いつもは路地の裏の裏まで人が歩いている街も、たしかに今日は静かで暗い。
そういえば。
震災以降、ココに来るのは初めてで、かつての明るいにぎやかな街がまるで違った街のような顔をしている…、感慨深い。
元気なホタテが入ってますよ…、と。
ひとり一個。
もらってそれをテーブルコンロで自ら焼きます。
網の上に殻付きのまま。
最初は口を閉じた殻。
ガスをつけるとしばらくじっと、そのまま静かに座ってる。
ところがパカッと、突然、殻が口開く。
火であぶられた下側の殻に貼りついていたホタテの柱が外れて殻が開くのですね。
分厚い柱と紐がパクンと持ち上がり、ユラユラ、揺れる。
喉がゴクリと音を立てます。
下の貝殻にたまった汁をこぼさぬように、注意しながらひっくり返してペリッと殻を、剥ぎ、はずす。
しばらくすると貝から夥しい量のスープが出てきて、それがフツフツ沸騰はじめる。
柱を剥いで縦にして、熱が通っていない紐や柱の側面に火をくわえてく。
生の部分を貝殻の上に乗せると汁の沸騰が一時期おさまり、それがユックリ、再び沸騰しはじめる。
温度が上がった合図でそこに醤油をたらしてハフハフ食べる。
プチュンと柱が歯切れて崩れ、コリコリとした紐の食感もたのしくて、ホタテのうま味に悶絶します。
函館近くから飛んできた鮮度の高いホタテだからのこの味わいに、北海道の食材って手を加えずになるべく自然な状態で食べてあげるのがおいしく食べるコツなんだなぁって。
テーブルコンロがまだ温かく、それで他にもいくつか焼いた。
マグロの頬肉。
どうぞとお皿に出されたときには、これって魚?って思うほどに肉だった。
つやつやとした赤身のお肉。
白い脂が網の目状に入ってて、牛肉のヒレ。
あるいはラムの赤身のような肉感的な姿形でウットリします。
網にのっけて炙っていくと、これまた不思議なほどに牛肉やいたようなそんな感じになっていく。
ほどよく焼けたのを切り分けて、食べるとジュワッとキレイな脂が口にひろがる。
それからベーコン。
厚切のモノを網で焼く。
片面軽く焼き上がり、ヒックリ返してもう片面が焦げたところではさみでジョキジョキ、一口大に切り分ける。
それを再び、網の上を転がしながら4面まんべんなく火を通し、表面カリッと焼きあげる。
これまた脂がおいしい食材。
今日は魚を食べようよ…、とそれで選んだこの店で、なのにこうして肉食べる。
なんだか本末転倒かなぁとおもいつつ、それでも肉の脂はおいしい。
気持ちが明るくなるような気持ちがしてくる、オゴチソウ。
はんぺん焼いて口に含むとジュワッと魚のすり身がとろける…、これも魚のひとつでございと、次の料理の口が準備をはじめます。
ここのお店が一番、力をいれてる料理。
刺身がドンッとやってくる。
普通、居酒屋に行くと刺身が最初の方に出てくるところがほとんどで、だって、熱を通さず魚を切っただけでしょう。
手間がかからずだから最初にお出ししましょう…、ってそんな考え。
けれどここ。
うちのメインは刺身だから。
しかもいろんな種類の魚を使って、贅を尽くして盛り込むんだから時間がかかって当然でしょう。
そんな考え。
だから堂々、メインのかわりにやってくる。
北海道の海の幸がメインでござる。
生のボタンエビ。
卵もキレイな空色で、両手で掴んで殻を剥きまずは卵をプチプチ食べる。
口の中で卵が爆ぜる感覚を十分たのしみムッチリとした身を食べる。
上品にして上等な、しかもドッシリうま味を含んだ味わいに、ウットリしながら次は何をいただきましょう…、と。
北寄や赤貝。
今の時期は貝がどんどんおいしくなる頃。
海の滋養に満ちたコッテリ濃厚な味をたのしんで、それから秋刀魚。
生でそのまま。
あるいは炙って〆た秋刀魚と味わいさまざま。
それから今日は、朝活けじめのスルメが入っております…、と。
それを刺身で造ってもらって、一杯丸ごと…、しかもワタツキ、気持ちがあがる。
あめ色をしたハリのあるイカ。
最初はコリっと歯ごたえがあり、ところが噛んでいくに従って、どんどんトロミがやってくる。
気づけばトロトロ。
イカ独特の濃厚なうま味が口のすみずみ満たす。
イカの胴体を刺身でほとんど食べ尽くし、耳と足の部分を揚げてもらう。
軽く衣をつけて唐揚げ。
これまた甘くて、プルンと旨い。
お酒がすすむオゴチソウ。
鯨の唐揚げ。
魚の煮つけと海の幸がフンダンで、何しろ今日のお通しが、大アサリのバター炒めだったりしました。
かつて魚は日常的な食べ物で、肉が非日常的なゴチソウだった。
今では安い肉の料理が街のすみずみ溢れてて魚の料理はワザワザこうして食べにこなくちゃいけない料理になっちゃった。
ちょっと変わった食材が、手に入りましたので…、と作ってくれたエイのひれ。
分厚いヒレに衣をまとわせ、サクッと揚げてバター醤油をからめた料理。
コラーゲンがタップリの、アラの切り身を食べてるみたいなガッシリとした食感がある。
味はまるで平貝。
ところどころに軟骨が残ってそれが口をカリカリ、くすぐってくのがまたたのしくて、海の食べ物ってスゴイぞ…、って再認識をする夜となる。
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