夜をひさびさ六本木…、街を代表する炉端焼きの老舗「田舎家」にくる。
コの字型のカウンターの中。
炭場を作って、お客様の目の前でいろんな素材を焼いてそれをそのまま、ササッと提供をする。
代表的な大衆居酒屋のスタイルを六本木という街にあわせてアレンジをした。
今から30年以上も前のコトでしたか…、当時の六本木はこの街にしかないモノを求めてやってくる、贅沢を知った大人が集まる街だった。
だからそうした人たちに、受け入れてもらえるようにといろんな工夫をしたお店。
普通はカウンターの中に調理人を立たせて料理をするのだけれど、ココはカウンターの中を舞台のように仕立てる。
カウンターの前に食材。
まず真ん中に氷を山のように積み、魚やエビをドサッと飾る。
それを中心にしてザルにのっけた野菜をあれこれ。
全部で40種類ほどの食材がキレイに並んだ向こうに、炭場。
そして調理人。
調理人を炭の前に正座をし、お客様からの注文を待つ。
注文された食材を上体伸ばしてとってそれを炭の上にのせて焼く。
食材によって油を塗ったり、塩をうったり。
あるいは出汁を霧吹きでふきつけながら、コンガリやいてお皿に盛る。
それを大きなシャモジ状の板にのっけて、さぁ、どうぞ…、と腕を伸ばしてお客様の目の前にそっと差し出すのです。
炭が熱くて、長く座っていると顔が焼けてしまう。
だからほぼ20分で燒き手が変わる。
変わるたびに、よろしくお願いしますと大きな声で挨拶。
重たいお皿を板にのせ、突き出す際に腕の力を必要とする…、だから体力作りが欠かせないって笑いながら突き出す腕はみんなビックリするほど太い。
イナセと粋が共存している男の空間…、六本木という街にあってちょっと異色で、それを求めていろんな人がやってくる。
お客様のほぼ半分が外国からのお客様。
日本情緒を味わえるのと、目の前にある食材をみながら注文できるというのが便利でたのしいからと観光客や外国人の接待なんかに重宝する店だからなんでしょう。
今から10年ほど前なんて、平日なんかはほぼアメリカ人なんてコトもよくあった。
今はさすに円が強くて、白人系の人は減った。
かわりに韓国…、あるいは中国からお客様が結構あつまる。
昨日なんてお客様のほとんどが韓国からの人だったんです…、ってお店の人もビックリしてた。
料理の仕方はとてもシンプル。
基本的に焼くだけで、その分、素材の持ち味を堪能できるところがうれしい。
しかも素材が吟味されてて、上等ですし。
例えば椎茸。
どんこの分厚くコロンとほどよき大きさのモノ。
噛むとジュワッとおいしいジュースがやってきて、前歯を包みこむようなフッカリとした豊かな食感。
アスパラガスは緑豊かでほくほくザクザク、歯ごたえたのしい。
炭の香りと煙の風味がほんのり苦く、酒をおいしく飲めるのですね。
オクラに銀杏、野菜をあれこれお願いし、干した姫貝をクニュクニュ噛み噛み、素朴だけれど味わい深い、ホッコリした味。
キンキを今日のメインとします。
太ったキンキに串をさし遠火の直火でジックリ時間をかけて焼く。
北の海の深海魚。
脂が乗って、皮にネットリ粘り気のある見た目はちょっとグロテスク。
しかも真っ赤でところがコレをコンガリ焼くと皮がバリッと身離れも良い。
みずみずしくてツルンとハリのある身がホロリ。
食べるとジュワリと脂と一緒にとても上品なうま味がにじむ。
骨を摘んでチュバチュバしゃぶり、味わいつくして指を今度はチュバチュバしゃぶる。
こうした魚を食べると思わず無口になります…、芋焼酎のお湯割りを片手に一心不乱に魚と格闘しみるみるうちに解体ショーが完了、キンキの骨格標本ひとつ出来上がり。
〆を雑炊。
さっぱりとした卵雑炊を作ってもらう。
昆布と椎茸で作ったお出汁。
塩だけで味を調えスッキリ仕上げる…、だから一味足りないかなぁって思う程度の上品な味。
薄切り椎茸、刻んだ三つ葉。
そして玉子と素材の風味と味が素直にたのしめる。
なにより飲んだお腹にやさしく、気持ちがホッとおちつく料理。
柚の香りがお腹にそっと蓋をする。
店を出る前、トイレを借りる。
仄かな灯と隅々までが磨き上げられた風雅な空間。
リンゴをカゴにたくさん積んで、自然な香りがスッキリ空気をうつくしくする。
こうしたところが日本の美徳でステキなところ…、いいなと思う。
それにしても今日のココ。
金曜の夜というのに満席にならなかった。
かつて平日だって予約をとるのがむつかしいほどの繁盛店であったのに、やっぱり日本の景気はちょっと風邪っぴきってそんなコトを思ったりもした。
はやく元気になればいいのになぁ…、そろそろ来年、鬼が笑わぬ程度に考えなくちゃって思う夜。
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