四谷三丁目の小さな洋食屋さん、「キッチンたか」にやってくる。
四ツ谷の駅前、新道通りの入り口にある「エリーゼ」という洋食屋さん。
そこでずっと働いていた人が、今年の夏に独立した店。
車力門通りという、四ツ谷荒木町のメインストリートのひとつに面した、かつて河豚の専門店があったという場所。
シェフがたった一人でやっているのでメニューはかなり限定されてる。
ビーフトマトというエリーゼの名物料理。
それから分厚い豚肉を使って作るポークジンジャー、ポークソテー。
それに煮込みハンバーグという、洋食レストランの王道商品。
プラス、カレーにオムライス。
本家エリーゼのメニューから揚げ物料理を全部バッサリ切り捨てた、潔さが身の程知ってていい姿勢って、開業とほぼ同時にやってきてそう思った。
かつてこの車力門通りとそれと並行して走る、杉大門通りは人があふれる通りだった。
夜も更けるとタクシーがズラッと並んで客待ちするような通りでもあり、そのほとんどが飲食店から出てくる人を目当てにしたモノ。
次々、お店も増えたけど去年くらいからかなり厳しい淘汰がはじまる。
古いお店が多かったから経営者の世代交代、新陳代謝が促進されたというコトもあったのかもしれないですネ…、店が随分入れ替わり、こうした新しいお店が最近、増えてきた。
これもいいコト…、そう前向きにとらえましょ。
ビーフトマトをたのもうか?って、思ってそれでメニューをみました。
そしたら他にも、ビーフジンジャーとかビーフバターとかって名前を発見。
どんな料理なんですか?
聞いたら、ビーフトマトのトマトを生姜やバターに変えたモノなんです…、って。
オモシロイ。
それならビーフバターを下さいな…、って。
お願いをしてやってきたのが、まさに牛バラ肉のバター炒め。
甘辛で、ちょっとすき焼きっぽい味がする。
脂がほどよくのった薄切りの肉で、他の具材は玉ねぎだけ。
ちょうど牛丼。
そこにバターをのっけて和えたみたいな感じ。
ご飯にあう、あう。
ビーフトマトは洋風の味。
トマトの酸味がイタリア料理のような感じでご飯よりもパスタとあえて食べたくなるような料理だった。
これは醤油の味がドッシリ、ご飯向き。
サイドの食材、あるいは調味料の一部が変わるだけで、こんなに味の印象が変わるのって料理はとってもオモシロイ。
フンワリ、やさしく盛りつけた千切りキャベツをタレにからめて食べるとそれさえご飯のおかず。
やさしい味のポテトサラダがシットリとして食感、味とも見事にたのしい口直し。
それからもひとつ、バーグカレー。
実はエリーゼ時代から、ハンバーグを食べたコトはなかったのです。
他に食べなきゃいけないモノが沢山あって後へ、後へと先送り。
それで強、はじめて食べた。
コロンと分厚いハンバーグ。
メッシュの細かいひき肉で、こんがり表面だけを焼く。
それをオーブンの中でジックリ焼いて、だから中にはタップリ肉汁含んだまんま。
そのハンバーグ。
提供前に、デミグラスソースの中で温める。
お皿にご飯。
こんもり盛ってまずはカレー。
ビーフカレーでございます。
辛味よりも酸味とうま味がシッカリとした洋食屋さん的濃厚カレー。
上にコロンとハンバーグ。
それからトロンとデミソース。
スプーンでザクッとそのハンバーグに切り目をいれる。
するとジュワーッと夥しいほどの肉汁が、ほとばしりでる。
それも澄んだキレイなジュース。
まるでブイヨンスープのよう。
だからたちまちご飯がスープご飯のようになっていく。
みずみずしくて、しかもうま味がシッカリしててだからカレーやデミソースのうま味を薄めず、サラッと喉にやさしい感じ。
しかも細かなひき肉がプチュンと奥歯でほぐれて肉の香りやスパイスの匂いを発してなんとも旨い…、ナツメグ風味がなつかしく、ふふふと思う…、オゴチソウ。
まだまだ認知が低いようでお店はおだやか。
それほど忙しくはないみたい。
けれど一生懸命、鍋振る姿。
ひとつひとつ丁寧に盛り付け、千切りキャベツをいとおしげにそっとつまんで、やさしくのっける。
後姿が凛々しくて、がんばって!って応援したくなるお店。
ところで本家のエリーゼという店。
実は先日、閉店をした。
そのあと、そこのオーナーシェフが店はそのまま。
メニューを変えて再オープン。
いつも行列ができる店。
だから効率を揚げるためにと揚げ物だけにメニューを限定。
カツ専門店になってしまったいうのであります。
そこでお店を16年間やり続け、新たな未来のためにあえて業態変えてみましたというコトだけど、あまりに唐突。
かなしむ声がネットの中でも結構多い。
そこの店主の気持ちはかたくな…、今のままずっと揚げ物専門店でやっていくって言っている。
だとしたら…。
かつてのエリーゼの名物のソテや炒め物、ハンバーグ。
それらを唯一食べるコトができるお店はここのお店になったというコトなのでしょう…、カウンターの上に並んだ調味料や漬物も四ツ谷エリーゼのまんまだったりするこの景色。
かつての歴史を継承しましょう…、って心意気かもしれないなって、ある意味なんだかスゴイこと。
ますますがんばれ!って思う夜。
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