昼を王ろじ、とんかつ食べる。
入り口の横に「創業大正10年」の文字。
さまざまな伝説に彩ろられた店。
曰く。
「とんかつ」という名前の料理を作ったお店のひとつと言われる。
ポークカツレツではなくとんかつ。
タップリの油の中で分厚い豚肉を揚げて仕上げる、ご飯のおかずに適したレシピ。
それでも豚カツとか、トンカツとかカタカナ表記で西洋料理を装っていた。
それをはじめてひらがなで「とんかつ」と書く。
この王ろじがはじめたコト…、なんだそう。
そのとんかつという料理に命をかける意気込み。
それを、「路地裏の王様になりたい」という気持ちに込めて「王ろじ」という店の名前にしたんだという。
新宿伊勢丹の目と鼻の先。
だから新宿の街のど真ん中と言えなくもない場所。
なのに静かでひっそりしてる。
街のメインの動線とちょっと離れているだけで、人通りだってそんなにはない。
ココに来る人。
みんなワザワザこの店に来ようと思っている人ばかり。
通い始めてもう30年。
最初は古くて傾きそうな木造の一軒家。
それが10年前くらい前でしたか、改装をしてキレイになった…、けれど昔の一軒家的民家な感じで、そんなところにホッとする。
昔からの不動の名物、「とん丼」にする。
とんかつをメインの具にした丼で、ご飯の上にまずカレー。
そこにとんかつを乗せ、とんかつソースをかけたモノ。
ここのとんかつは独特で、包丁を細かくいれて筋を切った豚肉を筒状にする。
そこにタップリ卵液。
細かなパン粉。
そして再び卵液。
低温の油に沈めて、カラコロ時間をかけて揚げていく。
パン粉がサクッと立って仕上がるのが普通のとんかつのおいしい揚げ方。
けれどココのはまるでフリッタ。
なのに噛むとガッシリ歯ごたえ感じる衣。
目黒のとんきのとんかつや、神田淡路町の松榮亭の洋風かき揚げみたいな仕上がり。
ロースもヒレも区別がなくて、とんかつと言えばこの一種類というのもスゴイ、潔い。
カレーはかなりスパイシー。
濃度はちょっと濃い目のデミソースのような感じでしょうか。
カレーのルーというよりも、カレー風味のソースのようなそんな感覚。
うま味控え目で、カレーだけで食べると一味足りないような気がする。
それも、これも、これはとんかつと一緒に食べておいしいように出来ているから。
不思議なコトに衣の油がスッキリとする。
カツにかかったとんかつソースの酸味、うま味が混じって尚更おいしくなってく。
噛むとゴソッと衣が外れて、口の中でザクッと壊れる。
そして肉汁がジュワッと滲み、歯ごたえたのしい肉にガシッとたどり着く。
芥子をタップリ。
カレーと混ぜるようにして食べるとスキッと芥子独特のとんがったような辛味が走る。
とんかつソースを追加でカレーにくわえるとフルーティーなバーモントカレーみたいな感じになるのが、またオモシロイ。
それにしてもココの厨房。
同じ顔。
同じ体つきに、声までよく似た主人と弟子。
どこをどう見ても、父と息子がいひとつ厨房で働いている。
できた料理を運ぶおかぁさん。
ご主人の顔と奥さんの顔を一つにすると、息子さんの顔になる。
家族でやってる。
こうしたお店で働く人をみていると、なんだか胸がつまるような気持ちがしてくる。
ご主人は多分、ボクとそれほど変わらぬ年齢でしょう…、口元の髭がすっかり白くしかも凄くいい顔してる。
ちょっと気持ちがひきしまる。
そうそう、この店。
サイド料理もシッカリしてて、しかも特徴があってオモシロイ。
例えば最初にでてくる漬物。
王ろじ漬けって名前がついててこれが独特。
薄切り大根、ニンジン、それからピーマンが混じって漬かっているのであります。
味は塩味。
それに麹のうま味が混じって、浅漬風と言えばいえなくない味わい。
けれどピーマンが曲者でして…。
緑の風味がこれを洋風にしてしまってる。
一口目にはオヤッと思う。
変な味…、って思いながらも二口、三口、食べ進むに連れどんどんおいしくなっていく。
ボクの隣のおじさんが、メインの料理がでてくるまでコレをシャリシャリカリカリたべながら、ビールを飲んでた。
昼からビールとは粋な食べ方…、いつかはノンビリ、真似したい。
それから豚汁。
これもちょっと変わった作り方で、一人前ずつ手鍋で具材を炒めることから、作り始める。
まずはベーコン、それから玉ねぎ。
どちらも焦げた色がつくまでじっくり炒め、そこに麦味噌。
炒めた具材のうま味と油の風味を味噌にまとわせて、出汁で溶かして豆腐を入れる。
香り豊かで豚汁というより、ベーコン風味のオニオンスープに味噌の味わいをくわえたような不思議な仕上がり…、これが食べたくココに通って食べてるようなそんなゴチソウ。
また来よう。
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