ひさしぶりに「いもや」に来ます。
昼ごはんを食べ損なって、どこかで昼を食べなきゃいけない。
場所は神保町の界隈で。
思いつくのは、長らく行っていない洋食屋さん。
テクリと歩いてお店についたら、ちょっと時間が中途半端でありました。
夜の営業がはじまるまでのアイドルタイムの休みの時間。
あと小一時間はお店は開かない。
それで近所の「いもや」をのぞく。
おおっ、ラッキー。
営業中ではございませんか!
それで天丼。
それにしても秋がまだまだ遠く感じる、夕方前の日差しであります。
いつもココにくるのはランチ時。
だから暖簾に日差しがかかることはない。
明るく光る暖簾をくぐって、ガラッと引き戸を開いて中に…、磨き上げられた白木の鍵の手型のカウンター、中には厨房、職人さんが「いらっしゃい!」と声をくれます。
ココは天丼専門店。
普通の天丼とエビ天丼の2種類のメニューしか無く、今日は天丼。
目の前の鍋でカラコロ、揚がっていきます。
安い天丼のチェーン店の「てんや」の天ぷらはベルトコンベアー式のフライヤーが勝手に揚げてく。
ベルトの上でも壊れぬように、分厚く頑丈な衣をまとって挙がっていくのでどうしても食べると衣を食べてるみたいな食感がある。
けれどココでは手が揚げる。
だから薄くてフックラとした衣をまとって仕上がっていく。
エビを食べるとエビの味。
キスを食べると魚の香りがまずは口に広がって、それから衣の食感だったり、油の風味がやってくる。
エビにキス、イカに海苔でひとそろえ。
プチュンと歯ぎれる弾力のあるエビの食感。
ムッチリとしたイカにフックラ、キスの歯ざわり。
天ぷらという料理は、衣で包んで油の中で揚げるのじゃなく蒸して仕上げる料理なのだ…、とそんなコトを思い出させるやさしい味わい。
タレもやわらか。
カツオ節の風味がフワッと鼻から抜ける、甘みやさしくスキッと醤油の香りもひきしまっている…、天ぷらの旨みや香りを邪魔せぬ控えめ。
けれど衣の油と一緒になって、ご飯にシカッとしがみつつ口にやってくるとスクッと舌の上にてタレの旨味が立ち上がる。
固めに炊けたご飯もおいしく、あぁ、おいしいとウットリします。
追加でお新香。
今日の漬物はキュウリであります。
太くて立派なキュウリに塩をキチッとほどこし、軽くぬか漬けしたものでみずみずしくてカリカリ歯ごたえ軽やかで、天ぷらの油をキレイに拭い取る。
これ以外にもテーブルの上に、薄切り大根の浅漬けと紅しょうがが取り放題で用意されてて、どちらも天ぷらの油をキレイに拭ってくれる、相性のよいモノばかり。
しじみの汁もキチッと上等。
これで天丼550円。
漬物つけても650円と、申し訳ないほどの値段でニッコリ。
アリガタイ。
この店、すでに30年以上の付き合いで、ボクが初めてきたときは天丼一杯450円。
漬物が50円で両方たのんでちょうど500円と言う値段でした。
30年でたったの150円だけの値上がりでありがたさにも拍車がかかる。
ボクが通い始めた頃に見習いさんとして入った人が、今では店長。
髪もすっかり白髪交じりで、そういうボクもごま塩頭。
店長になるまで、彼はずっと真剣で笑顔のひとつも作らず天ぷらと格闘してた。
今では天ぷら揚げる役割を、彼の部下にほとんど任せて、自分はニコニコ、笑顔でお皿を洗いお客様にありがとうネというのが仕事になっている。
見ているこちらがシアワセになるほど、おだやかにしてやわらかなその表情に、ひとつのコトをなした人のココロの豊かと真の自信を感じてニッコリ。
ボクもまだまだがんばらなくちゃと思ったりする、ゴチソウサン。
関連ランキング:天丼・天重 | 神保町駅、九段下駅、水道橋駅
それからちょっと移動をし、次の仕事までお茶を飲みます…、サボールで。
不思議な店です。
神保町の駅の近所で、なのにまるで森の中にあるような心地良い薄暗さがお店の周りにあるのです…、昼なお暗いとでもいいますか、人通りさえ少ない通り。
お店の中も薄暗く、必死にカメラを構えてシャッター押さないと手ぶれ写真がもれなく撮れる、穴蔵みたいな暗さをもったミッチリとした濃密空間。
レンガの壁には無数の落書き…、学生街の喫茶店って昔はどこでもこんな雰囲気だったよなぁって思いながら飲むコーヒー。
酸っぱく苦く、小さなカップに必要以上に熱々で、それをフウフウしながら飲むのもまたなつかしい、さてさて仕事の時間が近づく、もう一仕事、ガンバロウ。
関連ランキング:喫茶店 | 神保町駅、竹橋駅、九段下駅
[4回]
PR