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2024/11/22 (Fri)
上海蟹
蟹を食べよう…、って誘われました。
上海蟹。
このご馳走がやってくると、ああ、今年もそろそろ終わりの準備をしなくっちゃ…、ってぼんやり思う。
ぼんやりしてちゃいけないんだけど、まだひとときはぼんやりさせて…。
そんな気持ちで蟹を味わう。
そんな夜。
場所は六本木の小天地。
おそらく東京というこの街で、一番のコストパフォーマンスに溢れたお店。
若いシェフ。
若いスタッフが一生懸命、おもてなしの練習するよにがんばっているステキなお店で、特にこの上海蟹の季節になると元気で店が爆発しそうな、そんな雰囲気。
店を挟んだ向かい側の、系列店の中国飯店。
日本で初めて上海蟹を紹介したという、その名店の味そのままに、気軽な雰囲気、明るいサービス。
気兼ねすることまるでなく、気楽に蟹をたのしめる。
ちょっとこぶりではあるけれど、ズッシリ重いオレンジ色のうつくしき蟹。
丸ごと蒸されて、手足をもがれて胴体もなくあまりに無惨なこんな姿も、みんなボクらのためのコト。
食べ易いようにあらかじめ、殻から身をせせって出してお皿に盛って、「さぁ、召し上がれ」というこのありがたさ。
箸でフワッとつまみ上げ、口の中にそっと置く。
ワタリガニの身の食感を、180%ほどシットリさせてジャスミンライスのような香りを焚き込めた蟹の身…、見事に艶っぽい。
甲羅の中にギッシリ詰まった蟹の味噌。
ムチっとしてて、自然と前歯にこびりつく。
それを舌でこそげとり、その舌の上にジンワリ広がる蟹の旨味に体をゆだねる。
生命力の味…、とでもいいましょうか。
コッテリとして濃厚で、人の元気を作り出す心のタービンを回すエネルギになるような味。
シアワセの味。
そしてなにより、この季節の美味を今シーズン、初めて一緒に食べる相手がこの愛すべき人たちであるという、このシアワセがなによりシアワセ。
スティームした蟹もおいしいけれど、生のまんま、紹興酒に漬け込まれた蟹もまた旨い。
べっ甲色に染まった身。
ツルンとシットリ。
まるでゼリーのような食感で、トロンと舌にまとわりついてくる。
味噌はまるでウニのよう。
無言でムシャムシャ。
会話が弾まぬかもしれぬビジネスディナーをするならば、冬なら絶対、蟹だよネ。
だって話をしなくてすむから…、なんていう。
けれど仲いい友人同士の蟹の会食。
言葉をかわす必要もなく、ただただ無心に蟹を貪り、互いの心を通わせる。
こんな食事もまたいい感じ。
他にもいくつか料理をたのしむ。
黒酢の酢豚。
豚肉の小さな塊。
熱い油で容赦なく肉の水分を徹底的に吐き出させ、そのとき開いた小さな穴に、黒酢を煮詰めた濃厚なソースの旨味を押し込める。
噛むとジュワッと脂の旨味。
クチャっと潰れて旨味を吐き出す、揚げられてもなお失わぬ肉の繊維の逞しさ。
それにしても黒酢って不思議な食べ物、調味料。
お酢といえども、酸味よりも旨味が強い。
例えば野菜を炒めるときに、ちょっと旨味がほしいよなぁ…、ってそう思ったら黒酢をいれる。
油のくどさを一瞬にして消し去って、それを旨味に変えてゆく。
油や脂と一緒になったときの黒酢の実力に、ひれ伏すようなそんな一品。
おごちそう。
折角だから上海蟹をつかった料理をもう一品。
それでたのんだ「上海蟹と板春雨の煮物」にウットリ。
やわらかく煮込んだ板状の春雨の、クニュクニュとした弾力感の見事なこと。
とろみを帯びたそれをつまんで、ススっと吸い込む。
唇、ベロンとなで回し舌にピトっと貼り付くようにやさしく乗っかる。
不思議なほどに色っぽい。
噛めばモチモチ。
ネットリしはじめ、そこに蟹の旨味が混じる。
蟹のほぐした身や玉子がそれにシットリ感やプチプチとした食感あたえて、口の中がとてもにぎやか。
音楽にこれを例えりゃ、レスピーギの手になる交響詩。
ローマの松の最終楽章「アッピア街道の松」のようでありますか。
ズンダンズンダン、一定のリズムで奏でる低音パートが板春雨の迫力のある食べ心地。
そこに上海蟹のメロディーが、手を変え品変えやって来ては消えていき、最後にシンバル、ティムパニで徹底的に盛り上げ終わる。
食べて爽快。
食べ切ったって充実感に気持ちが上がる…、そんな逸品。
〆はやっぱり担々麺にしませんか…、と。
他にも例えば上海蟹の身をタップリほぐしいれた汁そばがある。
あるいは蟹の玉子と身を一緒に炒めた贅沢チャーハンもありはする。
けれどココの担々麺。
ボクはずっと、ここの担々麺こそが担々麺界の王様だ…、って信じてやまない好物で、だから今日もこれが〆。
スルンとなめらかなストレート麺。
麺そのものをたのしむ料理じゃないからの麺。
この麺づたいにやってくるスープの味やその食感をたのしむために、麺そのものは存在感を極力消した、その控え目にまず感謝。
ただ今日の茹で加減はちょっと行き過ぎ。
いつものハリにちょっと欠けたのがちと残念。
スープ自体はトロンとなめらか。
クリーミー。
スッキリとした辛味とそれを支える旨味。
ナッツの風味とほんの少々の渋味とそれから香ばしさ。
スープをすすって、目を閉じて、舌に気持ちを集中させると、いろんな味が広がってくる。
ズルッとやってゴクゴクたのしみ、最後にサラっと酸味を感じる。
堪能す。
今の季節の蟹はメス。
あと一ヶ月ほどで、今度はオスがおいしくなってく。
そのとき、こうしてまたそれを味わうことができればシアワセ。
あと2ヶ月とちょっとで今年も終わり。
がんばろう!
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2009/10/23 (Fri)
日記 : アジアの料理
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無題
うらやましい夜ごはんですね
小天地・・・
ブックマークしておきます
放浪者さん / 2009/10/23(Fri) /
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編集
ぜひ今度
> 放浪者さん
小さいながらも気持ちのよい店。
何を食べても当たり外れのない出来で、シアワセにしてくれるお店でもあります。
ぜひ、今度。
サカキシンイチロウさん / 2009/10/23(Fri) /
編集
な・な・な・なにーーー
上海蟹・・・・・・
プン・・プン・・
蟹が旨い季節ですか
しばらく食べていませんねー
今度、一緒に食べに行きましょうー。
問題児(岩手)さん / 2009/10/24(Sat) /
編集
ぜひぜひぜひ
> 問題児(岩手)さん
蟹にむしゃぶりつきながら、たのしい企みをするなんて、ステキですよね。
ぜひ、ぜひ。
サカキシンイチロウさん / 2009/10/24(Sat) /
編集
蟹はやっぱり
野郎の食べ物ですかね
昨年、女子4人会に新世界菜館を使いましたが、…
以前、サカキさんもそれっぽいハナシをしていたような。
むむぅ、って感じです。
めるばさん / 2009/10/26(Mon) /
編集
ワガママ系
> めるばさん
蟹は「ワガママ系」の食べ物って思います。
何度も女性ばかりの蟹の集いに及ばれしたことがありますが、たのしかった。
自分のたのしみにどん欲なワガママさんたちが、互いのワガママを認めあうようなそんな集いは最高でした。
蟹を食べ散らかすような野郎系蟹会食もまぁ、たのしくはありますが、ボクは「ご機嫌なワガママ系」蟹会食の方が好きですね。
サカキシンイチロウさん / 2009/10/26(Mon) /
編集
東京、上海蟹!
今日、予約いれました。上海蟹食べるため、変わり者一等兵、社長の機嫌とりと仕事頑張っています。たのしみ~!
変わり者ミダさん / 2009/10/27(Tue) /
編集
念願の
> 変わり者ミダさん
念願の上海蟹デビュー。
週末、飛び石連休。
頑張って、頑張って、とびきりの東京研修をたのしめますよう。
ニッコリいきましょうね。
サカキシンイチロウさん / 2009/10/27(Tue) /
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