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2024/11/28 (Thu)
小笠原伯爵邸の秋
小笠原伯爵邸にて、新しい調理法の勉強をする昼。
日本中からレストランの経営者さんや調理長が集まりテーブル囲んでたのしむ。
この伯爵邸。
もともと1927年に小笠原家30代当主が建てた、スペイン風の折衷邸宅。
戦後、アメリカ軍に接収されて、その後、東京都の持ち物として児童相談所や女性の自立支援の施設が入って使われていた。
けれどそうした役目も終えて、25年間閉鎖され、荒れ放題になっていた。
それを東京都からの公募によって、「歴史的建造物としてふさわしい活用」を前提にここをレストランとして再生しよう…、ってそんなプロジェクトに最初から参加させてもらった。
凄かったです…、その荒れ具合。
床はほとんど朽ち果てて、ほとんど原形をとどめぬ部屋があったほど。
それを竣工当時の写真や資料を参考にして、小さな建具や床板一枚までをキチンと修復し当時のままに再生をする。
結局、工事は16ヶ月にも及んでしまった。
建物の修復のみならず、室内の照明、家具も出来うる限り竣工当初のイメージのまんま。
2002年の6月に、営業スタートになった時には感無量。
スペイン風の建物であって、しかも当時、スペインにはエルブリという新たな料理の風が吹きつつあった時期。
新しいスペイン料理の調理方法をベースに、日本の豊かな食材を活かした、思いもよらない驚きに満ちた料理でのおもてなし。
って、コンセプトにて今に至るというところ。
定期的に伺っていて、そのほとんどが特別のイベントやレセプションのとき。
だから立食の機会が多くって、テーブルについてフルコースをお客様の立場で食べるのはひさしぶり。
スペインからはじまった新しい調理方法の世界にたのしく身をゆだねましょう…、と、リラックスしてテーブルにつく。
さて、午餐。
まずは前菜。
ポワローと墨烏賊のスープ・マドラスオイル風味と言う一品。
西洋ネギのポワローとジャガイモを茹で裏漉しし、そのピュレに魚介の旨みを含んだスープをやさしく加えて、ポッテリとした濃厚ポタージュのようなスープに仕上げる。
烏賊の墨やパセリやスパイス。
香りを発する素材はみんな一旦、香りを蒸散させて油の中に閉じこめてそれをポツンポツンとスープの上に垂らして風味をつける。
スプーンでちょっとすくって食べるとすくった場所で香りや風味が異なってくる。
一緒に混ぜると思いもよらぬ複雑な風味になって、ひとつでいくつものスープを食べてる気持ちになれる。
いきなりエルブリ的なる魔法を感じる…、お腹がグーッ。
サイドに塩だらのブランダードとイディサバルのサブレ。
塩抜きをしたタラを濃し、味をくわえてマヨネーズのような状態にして食べるちょうど魚のパテのようなモノ。
乾いたバゲットを薄切りにして、そこに塗り付け食べるのが一般的な食べ方で、けれどココでは一工夫。
イディアサバルって言う、バスク地方のチーズを焼いたサブレを土台にそこにのっけて、一緒に齧ると、ヤギのチーズならではの濃厚なサブレの香りが、タラの風味と一緒になって口の中は旨みの洪水。
前菜と料理をつなぐ役割をする、ちょっと重ための料理が二つ、続きます。
まずは「クリスピーな真いわし・シークワーサーの香り」。
鰯をバターを折り込んだ小麦の皮で包んで揚げるように焼いたモノ。
春巻きのようなこの物体の、上にポツリポツリとのっかっているのがニンニク風味のピュレを泡にしたモノで、お皿の底には魚のスープ。
折角のカリカリとした皮がスープに浸かって濡れて、その食感が台無しにならぬよう、グレープフルーツの上にのっけてサーブ。
パリパリのその食感をたのしみたければそのまま食べる。
スープに浸して食べると皮が、テロンと柔らかくなり、まるで違った料理に感じる。
続いて「帆立貝とフォアグラのクレマ・洋梨のキャラメリゼとブラックオリーブオイル添え」なる料理。
エルブリ的なる料理の、代表的な調理方法のひとつに「温度と時間と圧力を完全にコントロールすることで低温調理を可能にする」というモノがあって、そのとても洗練されたやり方が「ガストロパック」と言う方法。
圧力をかけると沸点がかわり、低温でも味を素材の中に入れることができるという原理を使った調理法。
料理の上を飾る梨。
その梨に、モスカテルというブドウジュースを発酵させてブランデーと馴染ませたデザートワインのようなお酒の風味と味を加熱をせずに移してる。
噛むとシャクシャク、ほぼ生で、なのに口の中にやってくるのはワインの味わい。
見た目を裏切る味のたのしさ。
サイドに添えた野菜は秋から冬のほんの数週間だけ収穫出来る、プンタレッラという洋野菜。
みずみずしくてちょっとほろ苦い、秋の風味を味わった。
メインに向かう前にご飯の料理をひとつ。
「仔鳩のアロスメロソのトリュフの香り」というコノ料理。
アロスメロソってまるで何かの呪文のような名前の料理。
ご飯の煮物っていう意味になる。
米を食材として多用するスペインの、パエリアとは違ったご飯の料理で見た目はリゾットにかなり似ている。
けれどアルデンテにこだわり米をホツホツ仕上げるイタリア風とは一味違って、しっとりやわらか。
硬めに仕上げた日本の雑炊にとても近くて、口にあう。
お皿の縁に、鳩の煮汁を煮詰めたモノと、マージョラムの香りを移したハーブオイルで絵を描くように盛りつけて、それをちょっとづつ、お米に移して食べると風味がスクッと立つような鮮やかさ。
お米の上にフワッとのっかる泡はチーズ。
風味と旨みとコクが混じった味は濃厚、なのに口に含むとジュワッと存在消してしまう泡ならではのはかなさが、とてもやさしいオゴチソウ。
そしてメイン…、魚とお肉。
「黒むつのプランチャ、ラ・マンチャ産の紫ガーリックピューレと、アーティチョークのチップス」という、一息で言おうとすると途中で息が詰まってしまいそうな名前をもらった魚のメイン。
プランチャっていうのは、鉄板焼きって訳されるコトが多い、つまりグリル。
スペインの料理は直火よりも熱した鉄板の上に鍋をおいたりあるいはそのまま食材おいたりしながら加熱するコトが多い。
その一例。
そこにラマンチャ。
スペイン自治区の一つ「カスティリアラマンチャ州」でとれた紫色したニンニクのピュレをのっける。
スペインの真ん中当たりに、適度に乾燥している風土。
大ぶりで薫り高くて旨みも強いここのニンニクは、ヨーロッパの中でもかなり珍重される。
地産地消がブームではある。
フードマイレージの問題だってありはするけど、「料理が生まれた場所で生まれた素材」を使ってたのしむ料理も、ときにおいしい。
非日常に戯れるという贅沢に、ちょっと溺れる。
肉は「イベリコフィレ肉と秋の茸、ガロチャチーズのエスプーマ栗のスモークと共に」。
ピンク色にみえるフィレ肉は、けれどしっかり中まで熱が通ってる。
低温で、ジックリ時間をかけて仕上げる、だからしっとり、肉のジュースはそのままに歯にまとわりつくようなネットリとした食感を生む。
栗の香りと甘みが秋を、スペインチーズの泡が異国のエキゾチシズムを教えてくれる。
これにて料理の部門の終わり。
テーブルの上を一旦、きれいに整えて、今日の午餐の幕引き前のもうひともてなし。
デザートをいただきます。
「杏仁のアイスとベリーのソース」と言う、口直し的一皿目の甘いモノ。
数分前に出来たばかりのアイスクリーム。
食事が終わる時間に合わせて、アイスクリームを仕上げていくのを心がけている、このアイスクリームは本当においしい。
なめらか。
口どけやわらかで、舌にのせるとたちまちとろけて舌に馴染んで口の隅々にゆきわたっていく。
杏仁の仄かな香りと最小限の甘みをもったアイスクリームに味を添えるのがフランボワーズとスモモのピュレで、キリッと引き締まった酸っぱさが口をスッキリしてくれる。
二皿目のデザートは「チョコレートで表現した木の実と果実」。
右から栗を仕込んだ丸いチョコ、柿のゼリーをくるんだ生チョコ、プラリネのチョコ。
レモンとセージのゼリーをくるんだチョコを挟んで、柚子の風味のチョコレートと、どれもすべてチョコで出来てて、けれど味わい、全部異なる。
皿の周りには砕いたナッツ。
チョコの上にはカリカリに焼いたクッキー生地で枯れ葉をよそおう。
枯れ葉が落ちた山道を、踏みしめながら散歩するような気持ちになっていただきたい…、とそんなステキなメッセージ。
コーヒーを飲み、プチフルいただき昼のお腹に蓋をした。
どれも印象的な料理であって、力強い味がする。
けれどお腹にスッキリしてて決して途中でつかれない…、すばらしき昼、ゴチソウサマ。
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2010/10/06 (Wed)
丸の内リム:洋
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なんて端整なお料理…!
うっとり見惚れました。
zebraさん / 2010/10/06(Wed) /
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無題
素敵な空間に、素敵なお料理。
思わず、はぁ~とため息が漏れてしまいました。
こんな素敵な空間で、現実逃避したいですo(^▽^)o
lovekuma69さん / 2010/10/07(Thu) /
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ため息
> zebraさん
昨日のこの集いのために、ワザワザ秋のメニューの開始を早めていただいたのです。
それがまたありがたく、一同、一皿ごとに秋がテーブルの上で深まっていくのを感じました。
おいしいお料理って、ステキですね。
サカキシンイチロウさん / 2010/10/07(Thu) /
編集
非日常
> lovekuma69さん
すべてを忘れて非日常に戯れる。
毎日をたのしく生き抜くために、時には必要なコトではないかなぁ…、って思いました。
サカキシンイチロウさん / 2010/10/07(Thu) /
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セブンのキャベツとパリ海苔むすび
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