昼、天気も良くてちょっと気分転換にと友人につきあってもらって「パザパ」にきます。
四谷三丁目の交差点からちょっと歩いた路地の裏。
なだらかに下がっていく石の階段の途中にある古いお店で、こうしてパシャッと写真を撮るとヨーロッパの街の路地裏みたいな感じがしたりする。
小さなお店。
かつてはこの建物の1階、2階を使って営業していたのだけれど、一時期、近所にお店を移した。
そこから再び移転をし、創業の場所にもどって仕切り直しをしてる。
テーブル8つ。
席数にしてたった20席という小さなお店で今日も一杯。
ご近所さんとかおなじみさんっぽい人がたくさん。
気軽なフンイキ、にぎやかでいい。
食欲がまだ本格的でないときに、何が食べたい?って思ったら、ビストロ料理を食べたいなぁ…、って。
お店の空気とたのしい会話。
それからそこにガツンと素朴でおいしい料理があれば気持ちもまぎれましょう…、と。
メニューを見ると、かつてよりもちょっと種類が減っていますか…。
魚介類の料理がなくて、肉と野菜ばかりのメニュー。
食材の管理がしやすいものをメインにムダのない経営をしましょうってコトなんでしょうネ。
レストラン経営の今は厳しい…、大変だ。
キッシュと豚肉のパテをまずはもらって前菜にする。
フルフルの玉子の風味がたのしいキッシュ。
お腹の中がやさしくホワッとあったまり、それを酸っぱいサラダがスキッとひきしめる。
肉の繊維がホツホツと奥歯を叩くパテはドッシリ、噛めば噛むほど肉のうま味と風味が広がる…、お腹の中にジワッと元気が湧いてくる。
そしてメイン。
ビストロ料理の最高峰にして大定番が、ハラミのステーキ…、メニューにあるとまずは絶対たのんでしまう。
牛肉の中で一番味わい深くておいしく、しかも噛みごたえのある部位はハラミでござる。
しかもそのハラミの特徴を一番上手く引き出せるのが、ステーキっていう調理法。
ハラミの脂がこんがり焼ける。
分厚く切って、炭で周りを焦がすようにして仕上げる焼き方。
頑丈で、しっかりとした身質でうま味がしっかり中に閉じこもり、ナイフを当てると最初はしたたか抵抗してくる。
ザクッと切って一口分をフォークに指したその段階で、もうそのうま味が手から伝わる。
内臓近くにある部分…、だから肉の匂いが濃厚で鮮度ただしいレバーの香りがちょっとだけする。
噛むとジュワッと。
ひと噛みごとに肉のうま味が口いっぱいに広がっていく。
うま味は濃厚。
けれど脂はさっぱりしててだからお腹にたまらず、たくさんの量をずっとおいしく食べられる。
サイドをつとめるポテトグラタン。
ポッテリとしたホワイトソースとホックリとしたスライスポテトの味わいいりまじりなんともおいしい、ご満悦。
もうひとつのメインがこれ。
豚肉と白菜のスープ煮、って名前のメニューで、一体、どんな料理なんだろう?って。
やってくるまで、ずっとあれやこれやと考えていた。
イマジネーションかりたてる料理はステキ。
ポトフのようかと思っていたら、これがかなりの肉々しさで、ビックリします。
塩漬けにした豚バラ肉。
それを周りを焼いて焦がして、うま味をしっかり閉じ込める。
それから白菜。
これも表面を焼いてこんがり、焼き目をつける。
ブイヨンはったお鍋に入れて、ベーコンくわえてクツっと軽く煮立てたモノ。
これがおいしい。
フォークの背中で押しただけで、ホロッとほぐれるほどにシットリ。
やわらかな肉。
脂がクチャっと潰れて、口に甘い香りを広げる。
煮こまれトロンとなった白菜は、ヌルンと歯茎にまとわりつくほどなめらかで、しかも甘くてほっこり旨い。
それにしてもこの料理。
写す角度で料理の印象がまるで違ってみえるのですね。
白菜をメインにとると野菜の料理、豚肉をメインに撮ると肉の料理のようにみえてくるのがとてもオモシロく、フランス料理の醍醐味って一皿の中にいくつもの料理が混じってできているとこ…、たのしいなぁって思ったりした。
それからデザート。
クレムドブリュレとガトーショコラをとる。
コッテリとしたカカオの香り。
ざっくりとした生地が唾液を容赦ないほど吸い込んで、バッサリとした独特の食感になっていく。
ガトーショコラは一口目だけが特においしく感じるお菓子。
お皿に流したクリームを、一緒に食べて口の中のみずみずしさを保って食べる。
一方、ブリュレ。
トロンとなめらか。
バニラの風味が甘くやさしく、口の中が潤っていく。
砂糖を焼いた表面がパリパリしてて、それをポンポン。
スプーンの背中で叩いて割って、アメリを気取ってプルンと食べる。
クレムドブリュレ。
ずっと前からあったお菓子だったんだろうけど、こうして一般的になったキッカケはやっぱり映画のアメリだったんだろうなぁ…、って、お店の中にポスターみつけて、しんみり思う。
このお店…、壁や天井、至るところに映画やフランス食材のポスターが貼られているのだけど、装飾的な目的よりも、古くなったところのアラを隠す役割の方がメインのよう。
だって、ここではじめてもう何十年。
今日頂いたランチの値段が1500円…、それで前菜、メインにデザート、コーヒーまでがつくというありがたすぎる値段でずっと提供するには工夫が必要なんでしょう。
お店の人も最少人数。
一部のグルメを気取る人のためのモノだったフランス料理を日常的なゴチソウとして売るその先駆者であるココも、そろそろワンジェネレーションを終えようとする。
なんだかちょっと切なくもあり、ありがたくもあるそんな店。
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