水道橋でランチとしました。
「かつ吉」という店…、とんかつの専門店で、業界的にとても有名。
それというのも、全国の良いトンカツ店を目指す人たちが参考にした、モデル店舗のひとつなのです。
トンカツ店には2種類あった。
まずそのひとつ。
小規模店で、料理のおいしさに徹底的にこだわった店。
商品数も少なくて、ただただトンカツがおいしい店でそこではがんこ親父が寡黙にひたすらカツを揚げてる。
店の雰囲気とかサービスなんかはまるで問題にならぬほど、カツに命をかけてるお店。
もう一種類はある程度の規模があって、トンカツ専門店というよりも「とんかつがおいしい和食店」のような店。
料理もおいしい。
けれどそれ以上に、店がステキで清潔で、従業員のサービスまでもがおいしいお店。
地方でとんかつの店を作るときには、後者の方が都合がよかった。
専門店を成功させるほどにトンカツのマニアはいない。
けれど、おいしい和食を食べたい人はたくさんいて、そうした人にたまにはおいしいトンカツでもいかがでしょうか?と言えば差別化できるだろう…、と。
そうしたお店の中でも一番、料理がおいしくしかも他の要素もきちんとバランスとれている…、だから日本全国からココのお店を見にやってきた。
今ではとんかつ専門店を作るブームが終わってしまって、業界的に話題になることがなくなっちゃった。
だから業界人的にはなんだか時代遅れになったお店のように感じるけれど、どっこい今もシッカリがんばっているのであります。
たまに無性にきたくなる店。
ビルの地下。
お店に入ると、空気が変わる。
民芸調のドッシリとした店構え。
分厚い木の椅子やテーブル、壁にはズラリと砥部焼の陶器が並んで生花と共にお客様を出迎える。
顔が隠れるほどに大きなメニューブックが、ドンッと置かれる。
びっくりドンキーのメニューのような…、と言えば分かっていただけますか。
最初、このメニューブックをみるだけでみんなビックリしたモノでした。
今みると、いまだに昔のまんまの形状と、今となってはビックリするほどの値段の料理がならんでいるのにビックリします。
だってとんかつがメインの定食で2000円の後半あたりから値段がはじまる。
エビフライなんかとカツを盛りあわせて食べようとすると、いきなり3000円を超えてしまうという高級さ。
ランチはちょっと安くなります。
安いとはいってもすべて1000円オーバーで、やっぱり上等。
けれどその上等な値段を値頃と思ってもらえるように、驚くべき大盤振る舞いがその後、はじまる。
まずは大きなボウルにタップリ。
野菜サラダがやってくる。
惚れ惚れするほど見事に千切りされたキャベツに、ちぎったレタス。
キャロットラペにそれからわかめと、食感さまざま、味わい多彩な野菜がタップリ。
おかわり自由でございます…、と。
それから漬物。
その日の漬物がかならず3つ。
今日は辛菜の浅漬に、カブの昆布漬け、それからキムチ。
これまたお替り自由でございますって言われる。
今となっては当たり前のコト…、けれど昔はこれまたビックリしたモノでした。
それをつまんで食べてると、時間がたつのも忘れます。
ここのカツはかなり丁寧に、時間をかけて仕上げてく。
注文が入って肉を切りだして、パン粉をつけてひとつひとつ手揚げで揚げてく。
だから時間がかかるのだけど、それをたのしく待つ工夫として始まった、こうした工夫も今では食べ放題的下世話システムに埋もれてしまう。
ちぃと、残念。
けれどやっぱりうれしいのが、ひとつひとつの商品が「これならお替りしたいなぁ」と思うレベルになっていること。
お腹いっぱいになるためじゃない、おいしくたのしい暇つぶし。
ランチ限定の「選べる盛り合わせ」という商品。
これがとてもオモシロかった。
メニューブックにオーダー伝票のようなものが挟まれていて、そこにメニューが書いてある。
まず基本セットが800円。
それでお替りし放題のサラダ、漬物、ご飯に味噌汁、それからアイスクリームのデザートがつく。
あとは一個200円でメインの料理を選んでたのむ。
ヒレかつ、エビカツ、カニコロッケとそれを一個単位で注文できるというシステム。
トンカツ屋さんでいつも不思議に思うのが、なんで追加注文しづらいメニューになってるんだろうというトコロ。
ロースかつを一個たのむとそれで大抵お腹いっぱいになっちゃって、他のモノが食べられなくなる。
そもそも他のものを注文しようと思っても、それがシッカリした分量でなかなか気軽に注文できるモノじゃない。
こうして自分の食べたいものを、食べたいように組み合わせ、食べたい量だけ選べる工夫っていいんじゃないの?って思ったりする。
今日たのんだのは、ヒレかつ。
エビカツ、ロースの大葉巻き揚げ。
それから牡蠣フライという四種類。
つまりこれで800円。
それぞれスパッと二つに切られて、その一切れが一口分。
8口分のおかずでござる。
ヒレはさすがに見事な揚げ具合。
やってきた直後にみると、中はピンクでけれどみるみるうちに中まで熱がはいってく。
そしてプクッとふくれあがって、ツヤツヤ、潤い、早く食べてとせがむよう。
小さなエビをぶつ切りにして、卵白使ってまとめて揚げた。
エビフライじゃなくエビカツという、ココが今や一生懸命名物メニューにしようとしているカワイイ一品。
プリプリしてて、食感たのしい。
エビが甘くて、うま味も濃厚。
肉とは違ったおいしさがある。
ロースの大葉巻きはこんなものかなぁ…、もっと安い、例えばさぼてんみたいなチェーン店が得意にしているこうしたメニュー。
やっぱりココの店らしくはない。
小さな粒の牡蠣をまとめて大きくあげる、牡蠣フライのやり方も昔ながらでなつかしい。
ご飯が2種類。
大葉のご飯と白米選べる。
大葉を刻んで軽く塩でもみ、炊きたてご飯と合わせただけの、作り方自体は簡単な混ぜご飯が、けれどサッパリおいしくていい。
揚げ物で疲れた口がシャキッとなって、食が進んでありがたい。
昔はこれに、味噌汁までもが2種類あって選べたのです。
ひとつはなめこ。
もうひとつは季節の汁で、今の時期にくるとワタリガニが入った味噌汁が用意されてた。
それ自体でご飯がお替りできるような、濃厚出汁で本当にうれしいゴチソウだった…、思い出しては、唾を飲む。
デザートにきた抹茶のアイス。
シッカリ冷えてて、しかも濃厚、コッテリ味でサービスというにはいささか贅沢。
それからお茶。
最初にもらうのはほうじ茶で、それとは別に梅昆布茶。
スッキリ、口がさわやかになり昆布のうま味が後をひく。
温かいおしぼりはいかがですかと、分厚い生地のおしぼりがお替りでくる。
一本だけでも贅沢なのに、これで二本目。
ありがたい。
かつての見事がいまだにしっかり存在している。
ふんばってるなぁ…、と感じる名店。
ではありますが、やっぱり苦労もしているのでしょう。
こうした付加価値をいまだ追求している彼等も「正社員だけで運営する」というコトと、「自分たちで自分の店を掃除する」という良き習慣を守り通す余裕がなくなってしまったのですね。
いまだにピカピカきれいではある。
いまだにサービスも良くはあるけど、かつてのピシッとしたメリハリが無くなってしまったようで、それだけかなり残念だなぁ…、と思ってしまう。
それを残念と思うコト自体が、今となっては贅沢だ、というコトなのかもしれません。
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