サカキノホトンブログほろ苦くとも旨き人生

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ほろ苦くとも旨き人生

昼間は思いがけずも暑くて汗をタップリかいて、ところが夜になると一転涼しくひと駅歩いて帰ることにする。
四ツ谷と四谷三丁目、その丁度真中くらいにやよい軒がある。
お店の外に大きなバナー…、さんまの塩焼き定食はじまりましたとあった。

秋の刀の魚と書いて、さんまと読む。
秋においしい、確かに日本刀のように反り返り磨き上げれた金属のようにキラキラ光る魚…、それがさんまで、数ある魚の名前の中でもこれほどおいしげに見える名前はそうそうはない。
風も秋風…、秋刀魚を食べてやろうじゃないかとドアをあけます。
そしたらお店の中においしい煙の香り…、魚を焼くときのおいしい煙の匂いが充満してるじゃないの、思わず気持ちが盛り上がる。

サンマ定食お願いします…、と、言って座ってまわりを見るとボクの隣のおじさんも秋刀魚をたのしげに食べている。
次から次へとやってくる人、その７割方はサンマ定食のお客様。
３人組のサラリーマンの２人は秋刀魚、一人が和風ハンバーグという注文で、秋刀魚をたのんだ２人に「お前、本当にお子様だなぁ」ってハンバーグくんがからかわれていた。
スゴいですねぇ、秋刀魚の人気！って、お店の人に言ったら「そうなんですよ、今日のお昼はほとんど秋刀魚で厨房の中が大騒ぎでした」って。

考えてみれば気軽に秋刀魚の塩焼きを食べさせてくれる飲食店が、驚くほどに今は少ない。
ファミレスなんてみんなお子様メニューばかりで、「なんで大人のお客様が来てくれないんだろう」って悩んでるけど、秋刀魚を焼けばいいんだよ。
煙の匂いに誘われて、大人がぞろぞろやってくるから…、って思ったりした。
そして今日のこの秋刀魚。
脂がのって身離れもよく、なによりワタまで甘くておいしく味わえるのにウットリしました。
ご飯のおかずに食べるのもいいけれど、これで日本酒飲んだら旨いに違いないって思いながらも、ムシャムシャパクパク…、キレイに骨だけ残ってオシマイ。

ご飯のお供に料理がひとつ…、ナスと豚肉の味噌炒めがつく。
今年はなんだかナスばっかりを食べてるみたいな気持ちがするネ…、しかもこうしてみそ味で炒めるコトが多くって、なんだか家でご飯を食べてるみたいな気がして笑っちゃう。
お替わり自由のご飯を心置きなくお替わりできるよう、タクワンの胡麻シソ和えがテーブルの上に置かれてて、パリパリ食べつつご飯一膳余分に食べる。
味噌汁を貝汁にしてたのんでみれば、これもぷっくり貝殻一杯に盛り上がる食べ応えのあるモノで、定食屋として悪くないよなぁ…、って感心します。
歌を小さく口ずさみつつ、家に帰ろう、ニッコリと。

ところで秋刀魚と言えば「秋刀魚の味」…、１９６２年の公開作品。
人生とは「身は旨いけどその腸はホロッと苦い秋刀魚の味の如き」であるって、そんな内容。

「あの名監督小津安二郎が全生命的意欲を以って」と格調高き名調子が、なんだか時代を感じさせ、３分ちょっとという予告編にしてはタップリした内容にココロが満ちる。
笠智衆の安定感は言うに及ばず、岩下志麻の初々しさに、岡田茉莉子の妖艶なるコト、岸田今日子はあの独特の台詞回しが聞こえてくるゴト。
人の顔がみんな活き活きしてうつくしい。
なにより佐田啓二の振り向いたときの横顔が、中井貴一にそっくりなことにビックリしました…、ひさしぶりに観てみようかと思う夜。

[8回]

2013/09/17 (Tue) チェーン店 Comment(8)

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小津映画って

50過ぎてから観ると、沁みますねえー。こればっかりは年取って良かったなあと思います。

echigoyaさん / 2013/09/18(Wed) /

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ローアングルの生活

小津さんの作品を見ていると
もっと低く生活してみるのもいいな、と思ったりします。

単にカメラがローアングルなだけじゃん！ということではなく
例えば、ちゃぶ台や広縁や、座布団などというものと共に
日本人は丹田に力を入れて、低い位置で生活してたように思えるのです。

昔、通っていた体操教室では、着物を着ることを薦めていました。
なんでも腰に帯を巻くと体幹をぐっと意識しやすくなるのだとか。
特に女性におすすめなのが、着物での雑巾がけだって言ってました。
これで、女性は体にすっと一本筋が通るそうな〜。
雑巾がけするほど長い廊下もないしl、着物もないので実践してませんが
小津さんの作品に出てくる女性をみていると分かる気がします〜。

t.s.garpさん / 2013/09/18(Wed) /

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リアリティが

> echigoyaさん
たしかに沁みます。
登場人物がグイッと自分の方に迫ってくるような、不思議なリアリティを感じるようになるんですよね。
いろいろな作品を見なおしてみたくなります。

サカキシンイチロウさん / 2013/09/18(Wed) /

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地に足をつけた

> t.s.garpさん
地に足ついた生活とでもいいますか。
腰をかがめる、身を低くする。
頭を下げる、ちょっと見上げる。
日本人の謙虚でやさしい仕草のすべてが、おっしゃるように「低い位置に身を置く」ことからはじまるように思いました。
身の程と身の丈。
心がけたくなりますね。

サカキシンイチロウさん / 2013/09/18(Wed) /

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無題

日が短くなってきて、朝晩肌寒くなって・・・少しだけ切なくなってましたが、そうだ、秋には秋刀魚があるじゃないか、しかも秋刀魚だけじゃないぞ、と気付かされて元気になりました。
「東京物語」での老夫婦の「ありがとう」のイントネーションが、広島に住み始めてしばらくたったときに、「ああ、これか！」ってつながって、一人にまにましてしまいました。「が」にアクセントがくるんですよねー。

doramiさん / 2013/09/20(Fri) /

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広島言葉

> doramiさん
ボクを育ててくれたばぁやさんのお郷が、呉市で、だからこのイントネーションはなつかしくてしょうがないんです。
広島の言葉といえばなにやら荒っぽい言葉のように思われがちで、けれどとてもやさしく味わい深い言葉なのですよね。
お国言葉を大切にするやさしい心を持ちたいです。

サカキシンイチロウさん / 2013/09/20(Fri) /

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秋刀魚食べました！

しばらく前へのコメントで御免なさい。
昨日、所用でNJに行った折、三ツ輪スーパーで秋刀魚の塩焼きを見かけ、思わず買いました。今夜夕飯に食べたら、すんごく美味しかったです！
何時ぶりかなあ、って考えたら、何と、35年振り!?　鯖の塩焼きは時々食べてましたが、この細い刀のお魚は、国を出てから食べてなかった（この時期に帰国した事は無いので）。
サカキさんのブログのお陰で、本当に久しぶりに堪能できました！
（サカキさんは東京のお肉他でアメリカを思い、私はこちらで和食を喜んでる---何となくお互いにヘルプしてると、嬉しい感じデス）。

ボルテイモアのおかずさん / 2013/09/28(Sat) /

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さんまと牡蠣

> ボルテイモアのおかずさん
ボクは先日、牡蠣をひさしぶりに食べたとき、あぁ、今ボストンならどんなにおいしい牡蠣を食べることができるだろう…、ってって思いました。
日本の秋刀魚にボストンの牡蠣。
それを一緒に食べることができたら、どんなにシアワセなことでしょう。

サカキシンイチロウさん / 2013/09/28(Sat) /

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